悪物の記憶

 アルヴィンは、拠点に帰って、ある記憶にひたっていた。弟との楽しい記憶。弟はいつも自分になついていて、頼っていた。それは彼が貴重な“青肌人種”だったからというのも関係してないことはないだろう。


 昔からスラムで育ったアルヴィンは、弟だけが唯一の支えであり、家族そのものだった。物心ついたときから二人は一緒におり、親もなく、なんとか二人だけでいきてきた。弟は知的で、信念ももっていたが、よく他人にいじめられた。そのたびに彼がかばったし、仲間外れにするものがいようものなら


「弟のケヴィンと一緒じゃないなら、いい」


 と幾度となく断ってきたものだ。そして―そんな二人の生活の中で最も華々しかった出来事といえば、スラムの支援スクールに、ケヴィンが通っていたことだ。スラムの中でも知識や学習意欲のある若者を無償で学ぶことができるように支援し、就職支援も行う。そんな神のような施設があり、そこへアルヴィンが毎度送り向かいをしていた。


 だが内心、不安でいっぱいだった。弟の“青肌”は、それほど目立つわけではないが

、多くのカルトや宗教などからつけ狙われた。なんでもサイボーグ化のおりに、ルーツとなる人種が特定の人間はサイボーグ化の結果が“青肌”となってあらわれるという。その青肌の肉をたべると長寿になるとか、呪術に使うとかいう恐ろしい話もあった。


 だがそこはアルヴィンの腕のみせどころ、スクール周辺の不良グループなどをすべて統括し、ケヴィンを守るための組織をつくった。それがいまの彼の“ブルーサイボーグ”グループの前進だ。


 しかし、恐ろしいことは、それだけじゃなかった。通学の折何度も目をつけもっとも幅を利かせていたのはマフィアでも不良でも、犯罪者でもなく、警察官だった。彼らはいちゃもんをつけたものをいじめぬいたり、悪ければ殺したりもした。なぜなら、彼らは“壁の内側”からきて、その自信があるということは、つまり強力なサイボーグ化をしたものが多く、スラムの人間には歯が立たなかったのだ。


 それをいい事に彼らはやりたい放題していた。それがあるとき、ケヴィンにめをつけたのだ。彼は何度もおちょくってきたり、ケヴィンを誘拐しようとした。

「青肌!」

「スラムの人間が、勉強なんて高等なものを受けられるなんて、いい身分じゃないか」

 彼らの憂さ晴らし、あるいは娯楽にケヴィンは使われた。しかし、耐え続けていた。物を投げられても、何をされても。


 だがある時それはおこった。

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