狙撃
その廃墟の二階、庭の見える場所で、長めのスナイパーライフルを設置して、虹色のモヒカンの男がその照準を合わせる、あとは引き金を引くだけとなった。
傍らで別の苦い顔をした短髪の男が、その様子をかたずをのんで見守っていた。
(これでいいはずだ、少々リーダーらしくはないが、信頼されていると捉えた方がいい)
「プルルルル……」
そのとき、短髪の男のほうのスマホに電話がかかってきた。スナイパーライフルを構えていた男が、舌打ちをする。
「す、すまない」
「なんだ、早くきれよ」
「いや、これは……リーダー……アルヴィンからだ」
「まずい、こっちをみている」
「!?」
「どうすんだよ、急用か?」
混乱した短髪の男は、モヒカンの男に、なぜか大声で命令した。
「撃て、撃て!!見られてるなら、撃つしかない、これは命令だ!!責任は俺が!!」
リーダーがこんな命令をするのか疑問を抱いていたモヒカンの男は首をひねりながら、またもや照準をエイドにあわせる。
「できれば……敵の力量もしらず攻撃の手を加えたくはないんだが、こいつはゾウも撃てる大口径のライフルだ、なんとかなるだおる……」
そしてトリガーにてをかけると、けたたましい発射音がひびいた。
“ドガーッン!!!”
そして、短髪の男が耳を塞ぎながら、モヒカンの男に尋ねる。
「やったか?」
「い、いや……」
「なぜやらなかったっ……んだ」
そういいかけながら、その理由をすぐに庭に視線を下ろした短髪の男も一瞬で理解した。片足が義足のゴールデンレトリバーがそこにいた。まるで、エイドをかばうようにして前にでたので、発射時に咄嗟に銃口を上にそらしたとモヒカンの男はいう。
「なんだってボスの犬が……」
混乱に混乱を重ねる短髪の男。モヒカンの男がいう。
「そもそもなんでボスからの電話を無視する必要があった」
「それはお前、お前が焦らせるから!」
言い合いをしているうちに、エイドは馬鹿らしくなって、その場を立ち去ろうとした。だが、少し心残りがあり、二階に潜んでいる敵に向かって大声で告げた。
「今度“俺たち”に危害を加えようとしたら、お前ら“二人”を殺す、元警察官をなめるなよ」
そういうと、モヒカンと短髪の男は震えあがり、チジミ上がってしまった。
その後、エイドはすぐに立ち去る。だがその通路の先、廃墟の出口である男がたってまっていた。右目に鋭く縦に走る傷をもち、黒目のない二重の輪義眼。ツートーンの無造作な髪型。あの男―このグループのリーダー、アルヴィンである。男のそばに先程のサイボーグ犬がかけより、なついていたので、エイドはすぐにでき事の意味を理解した。
「すまねえ、こんな形で襲うつもりはなかったんだが……」
「“こんな形で?”」
「いや……」
ギリ、と歯ぎしりをするアルヴィン。エイドは怒りながらたちさろうとする。その姿を見送り、弟の姿をかさね、アルヴィンは悲しい瞳を見せた。
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