異常 アルヴィン、シメオン、サディアス

 アルヴィンはテントにおり、昨夜、ちゃちな窃盗で手に入れた車の部品を部下とともに確認していた。お気に入りの顔の左側と目のつぶれた歯のかけた男〝ダゥロ〟とそれを品定めしていた。そこへシメオンがくる。

「なあ、どうするんだよ、早く過去の事はわすれて……」

「仕掛けるさ」

「でも……あの〝トレバー〟って警官が悪いかどうかなんて、お前の記憶が戻らなきゃわからないだろ、本当はお前も嫌なんだろう?だって、あの女にだって」

「そんなことはない!!俺の弟だけが救われなかったんだ、何かあったに違いない、俺たちは、常に警官の差別や暴力をむけられてきた、郊外の人間だってことだけで、それに、あの警官がペンダントを持っているのはおかしいじゃないか」

「……」

「本当は、あの時、止めるべきだったんだ」

 アルヴィンは、記憶をさかのぼる。あの火事が起こる前々日、弟がリベリオン・ロッジに入るっていったとき、もっとちゃんととめなかった。

「リベリオン・ロッジか……」

 彼らは“郊外の義賊”と呼ばれていてな、彼らについて話すぎるだけでも、本当は危ないんだが、お前なら言いふらしたりしないだろう。


 アルヴィンは、椅子に腰かけ、ダゥロに目配せするとダゥロは頭をさげすぐにその場からたちさった。

「リベリオン・ロッジ、その通りなの通り奴らは国の中枢を恨んでいる、統治機構の中枢を、郊外と、街とをわける巨大な壁そのものを、表向きは郊外の人間のために義賊的行為、モノを盗んで、慈善活動をしているが、実際は多くのテロ組織と関係しているという話だ」

「そんなヤバイ奴らなのか……グレーな噂はきいたりしたが、そこまでとは」

「それはそうだろう、俺にこれを話した先代のブルーサイボーグのリーダーはその後すぐに死んだ、関係性は不明だが」

「でもなんで、弟さんはその組織に?」

「ああ、お前も知っての通り、弟はかなり優秀だった、知的で、機械に関する知識ならその辺の一般人や一般の技術屋よりももってたろう、だからかな、やつは打算的にものごとを考えることを嫌った、やつは行き過ぎた正義感の持ち主だった」

【〝兄さん、知っている?権力の中枢には、裏社会とつながりをもっていてそれを隠している人間がいる、っていうことは、郊外、裏社会の側にもそれがある、そのしっぽを掴んで抵抗しようってグループがあるんだ〟】

「俺には、詳しい事はよくわからなかった、だが奴が楽しそうな事はよくわかったさ、四六時中機械いじりばかりしていて、ほとんど部屋の中からでてこず人間と関わりたがらないやつが〝リベリオンロッジ〟の人物については詳しいようだった、伝説的なカリスマが幾人もいるとか、その辺は普通の噂で流れてる程度だったがきっとやつはもっと深い事までしっていたのだろう、俺は痛い目をみる事を恐れて、彼らと関わることをやめろと何度も忠告した」

【俺は人付き合いも下手だし、こうやって影で力になるしかないから、それに彼らなら、本当に世界が変られるかもしれないんだ】

「そう語る弟の目は、輝いていたよ」

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