追憶 ドゥーイ
エイドは、襲われたそのに深く長い日夢をみた。機械には珍しく体が疲れており、それは実体のある疲れや摩耗、負荷がかかったというよりも、精神的なそれのように思えた。そのことを実感している、つまりどこかで―夢を見ている―という自覚があるのに、深く深く、記憶をたどる夢だった。
そこでは、かつての自分である〝トレバー〟と親友で同僚でもあった〝ドゥーイ〟の耳なじみのある話し声が聞こえた。
「~ああ、だから秘密だぞ」
「わかってるって、毎度確認しなくても、俺だって辛い記憶なんだ、母親に虐待されていたなんて……」
「お前のほうは父親が弱かったんだっけ?」
「ああ、それで体を鍛えて母をなんとか、〝正義〟の中で裁こうと、だが母は俺が高校にあがる頃死んじまった、ちょうどお前と親しくなる1年前だったな、それから父はみるみる変わっていったよ、別人みたいに、威厳があり頼れる父になった、父も何かしらのトラウマや過去を抱えていたのかもしれないな、それまで父を守っていてあざばかりつくっていた俺は、どうして今まで俺のために戦わなかったと思ったよ、でもその時には警察官への憧れの方が強くて、人の変化によって学んだんだよ、結果でしかない現象を核心だとおもってはいけない、原因や、理屈を見る正義を持ちたい、
そう学んだ、父を責められない」
「お前は学校でも明るくて、そんなことがあったなんて考えもしなかった」
「こっちのほうは恨んでたら死んだ、でもお前は……」
「ああ、高校をでるまでお前にずいぶん助けられた、お前にであったすぐあとに薬中になっちまって…」
二人は笑いながら、暗い過去の話をして、お互いのこぶしをぶつけあって再び誓った。
「俺たちだけの、絶対の秘密だ」
その夢にどこか、自分の懐かしい肉体が涙を流しているような錯覚を感じるとともに、今度は、別の白い空間にとばされた。そこでは、エイドという今の肉体のまま、ウェロウと自宅の見覚えのある椅子にこしかけ見覚えのあるテーブルをはさんで微笑みあっていた。
「僕はもう、存在意義を失っているよ」
体がぼろぼろになっていて、何があたのか、すこしニヒルに笑うエイド
「もういいの、あなたは私を愛するだけでいいわ」
その夢は、不思議と謎の説得力があった。死を恐れる自分が、そのような状況に陥るとも思えなかった。そもそもアンドロイド警官としてポンコツだったのは、異様に過去の記憶と死を恐れる自分の本能に、常にまけていたからだ。それが、こんなにボロボロに、しかし、なぜだか直観的に近くそれがおこるような予感がしたのだ。それは直近で街角で襲われた事と彼が口にした言葉が関係していたかもしれないが、しかしその夢は現実である気がした、そしてそのためには、自分が〝そうあるべき〟つまり彼女をいかにしても護るべきだと、夢に語り掛けられた気がしたのだった。
「きっと、彼女を守って僕は傷ついたんだ」
そうつぶやくと、目が覚めた。
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