反動
エイドは帰宅してからも、襲われたことは話したが、カノの名前が出たことは言わなかった。彼女らの仲を引き裂くわけにもいかないと思ったからだ。このころにはもう随分大人になって、人間のように垢ぬけてきていた。以前はずっと付きまとっていた、死への恐怖も薄まった。
郊外。薄暗闇から、覆面をした一人の男とその配下らしき男たち3人が現れる。暗い街中を一人のアンドロイドがあるいており、彼らはそれを尾行しはじめたのだった。アンドロイドは武器を携帯していた。警察官らしい。しかし、珍しいこともあるものだ。彼らは普段郊外には現れないのに。
ある場所でかがんで、何かを拾うようなしぐさをしたアンドロイド。その背後から、一人の男と件の三人が襲いかかる。
「わああ!!」
襲われたアンドロイドはあまりの物量に、よろめき倒れた。一人二人なら人間に力でまける事はないが、こうまとまって動かれるとさすがに今のスペックでは対処ができない。思わずアンドロイドは、懇願した。
「どうか、助けてください、助けてください」
リーダー各の男はおしだまりみていた。次に三人組の一番偉そうな男がいった。
「お前らアンドロイドは、金持ちの作ったおもちゃだ、金持ちは人間の命よりこんなものを……」
「どうか、助けてください、助けてください」
一瞬、リーダー格の男の中である記憶がフラッシュバックする。彼は覆面を外した。その下には、傷の男―アルヴィン―の顔があった。
「しかし、アンドロイドを襲っていいという法もありません、あなたたち、強盗行為を……」
「んなことはどうでもいい、どうして助かりたいんだ?」
「ソ、それは、助けてもらいたいカラです、ワタシ、わたシ」
そこで言語関係がおかしくなったのか言葉が崩れはじめた。笑いながら、3人組がアンドロイドにむかって小さな棒で何度もなぐりつける。
「まて……」
ふとある時に、アルヴィンがとめた。何かに感づいたのだった。別にアンドロイドがボコボコに傷ついていく様に心を痛めたわけではない。
「お前、何を守っている?」
アルヴィンが、なぜかそのロボットが一か所に立ち止まり、先ほど何かをとったように見えた場所を、部下たちから見えないようにしている事にきがついたのだ。そして、アルヴィンはアンドロイドに手を伸ばし、ゆっくり、もうほとんど力のない彼を脇におしのけた。
「やめ……て」
「何もしねえよ」
そういってアンドロイドをおしのけ、横からのぞきこむと、そこでアルヴィンははっと息をのんだ。
「女のコ……助けられなかった、郊外の、墓」
そこには、小さな土饅頭と名前のない墓石がおいてありその前に花が添えられていた・
「ワタシ、警察官、ナノニ、助けられなかった」
部下の一人がいった。
「ちっ、しらけた、もっと悪い奴からものをとろう」
ほかの二人も続ける。
「このアンドロイドどうするんだよ」
「運が良ければ、目を覚ますだろ、悪けりゃ……」
アルヴィンは、部下について、最後にその場を立ち去った。
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