サディアス カノ
でこが広く、中央にほくろがあり、骨格がしっかりしていてまるで昆虫のようにごつごつとしている、髪をかきあげ後ろでまとめ、後ろで結び、左右の前髪を少しずつたらしている細い切れ長の目を持つ男が脇のカーテンで仕切られた場所から出てきて、二人にいった。
「いいじゃないか、報復は俺たちチンピラには重要な要素だ、まとまりもつく、それにリーダーの悩みじゃないか」
アルヴィンがその男の名前を呼ぶ。
「サディアス」
「……」
シメオンは、苦虫をかんだような顔をした。
翌日のこと、ウェロウは朝、ある場所にでかけていた。それは郊外の建物で、郊外にしては治安がいい場所、厚い壁にかこまれた綺麗なレンガ造りの場所だった。その二階の一番奥の部屋に友人が住んでいた。心地よいアロマの匂いと全体的に青色をちりばめられた部屋。部屋中に絵画がかざってある。というのも、彼女は画家なのだ。
「ちらかっていてごめん」
普通は散らかるといっても限度があるものだが彼女の部屋の散らかりようは―まさに彼女が部屋そのものをアトリエとして使っていることからくるものだった。リビングの真横にキャンパスやら、スケッチブック、画材やらが散らばっている。
「突然ごめんね、ちょっと相談があって」
コーヒーをだされ、くつろいでいると、カノの
ショートボブ、眼鏡をかけ、下がり眉、丸顔で青く澄んだ瞳をしている彼女は、即座にその話に自身の意見をぶつけた。
「引き取るのはやめた方がいいんじゃない?」
「うん……」
「まるで別人なのよ」
「そうね、私もそう思うんだけど」
しばらくその話に熱中したあと、カノは意見が対立した空気を濁すためか、別の話をし始める。
夫が亡くなって以来、落ち込んで鬱気味になったウェロウは、ずっとVR眼鏡をつけて過ごしている。VR感覚が、心的ストレスを和らげる効果があると親友であるカノに進められていたからだ。そのことについて2,3話した後、その場をあとにした。
「はあ……どうしよう」
ウェロウは、この後一人尋ねる予定があり、時計をみてアパートを離れた。カノは話の中で何度もいっていた。
「あなたの心にどんな影響があるかわからない、やっとひどいうつ状態から抜け出したのに、新しい恋人でもみつけたほうがいいわよ」
カノがひどく飽き性でしょっちゅう恋人を作っては分かれているのを思い出して、移動中、ウェロウは少しおかしくなった。
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