郊外にいる男、弟ケヴィン

 ―その頃

「アルヴィン、アルヴィン!!」

「ん?」

 呼ばれて返事をしたのは、ぼろぼろのテント、廃屋に基地のようなものをつくってその椅子に座っている、右目の眼球がサイボーグで、その上から縦に傷をもちツートーンの無造作なショートの髪型、ウェロウがこの前店ですれ違った男だ。声をかけたのは下がり目下がり眉、黄色い眼鏡、パーマがかかった童顔。

「アルヴィン、やっと気づいたか」

「どうした?シメオン」

「どうしたじゃないよ、もうブルーに餌をやらずに2日だって」

「……ああ、さすがにまずそうだな」

 ブルーというのは、片足が義足のゴールデンレトリバーだ。旧型ではあるが義足はサイボーグ化されていて、わりと俊敏に動き回る。すらりとした顔立ちで、青色のスカーフを首にまいている。

「アルヴィン、いつまで“あの女”を監視しているつもりだ?情報は確かなのか?」

「ああ、古い付き合いの情報屋だよ」

「でも、何かたくらみがあるのかも、なにせ相手は警官だ、ここ最近うちのグループもいざこざがふえてきたし、もちろん下層構成員の中でだけど」

 アルヴィンは読んでいた本を傍のテーブルにおき、シメオンにつめよった。

「お前、俺の弟―ケヴィン―の敵をとりたくないっていうのか?」

「いや……それは」

「それにおれたち、"ブルーサイボーグ"のリーダーは俺だ、もし俺がリーダーとしてままならず、仲間割れするんならその時はその時だ」

「アルヴィン……俺はただ」

「ただなんだ」

 アルヴィンはシメオンの襟首をつかんだ

「ただ……お前が弟の事を引きずっているのがみてられないんだよ」

「……」

 しばらくのにらみ合いのあと、ため息をついて、アルヴィンはまた席についた。

「眠れねえんだよ……弟が灼熱の中、燃えている姿が目に浮かぶ……なのに俺は、まるでそれを思い出したくないみたいに、記憶がすっぽり抜けている、一体あの時何があったのか……それも思い出せねえ、俺はどうしてあの時、弟の無謀な作戦を、リベリオン・ロッジのメンバーへ入るって言葉を、武力を使ってでも止めなかったのか、なんで弟はこんなものを残して……」

 アルヴィンはその手に握られている小刀にめをやった。

「……弟さん、凄腕のメカニックだったろ、何か意味があるはずだ」

「フッ、ああ、まあ、ポンコツの発明もおおかったがな」

 小刀には、様々な機械がとりつけられていてその緻密さは、何かしらの高度な技能が封印されているように思えた。

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