第10話

 ローランス伯爵家。

 爵位の格の高さはそれほどのものではない家であるが、その領地の価値は信じられない程高い。

 ここ最近、ローランス伯爵領にあるとある山の一角に希少な鉱石である魔鉱石が大量に眠っていることが判明。

 莫大な金をもたらすことが半ば確定しているような状況にあった……その家は。

 

 現在。

 他国と繋がっているという疑いで当主が拘束。

 取り調べを受けているような現状にあった。


「ちなみに他国と繋がっているって話は本当?……鉱山を売る代わりにその国の侯爵

位と広大な領地を求めているという話だけど」


「ありえないわ。そんな話一度も聞いていないし、家に不審な人間もいなかったし、他国に出かけたような家臣もいなかったわ」


「なるほどね……僕が調べた限りでもそんな話はなかったから普通にデマかな」


「どうせ上の連中が私たちの家の魔鉱石目当てで適当なデマを吹っ掛けてきたに違いないわ」

 

 レゼは忌々しそうに眉を顰めながらそう力強い言葉で断言する。


「まぁ……確かにその可能性が高そうだね」

 

 魔鉱石が齎す利益は莫大だ。

 それを上が欲していたとしても何も不思議じゃない……何て言ったって魔鉱石は軍事転用が可能。

 僕と事を構えるのであれば是非が応にも手に入れておきたい一品だろう。


「さてはて……問題はこのデマの嘘っぱちをどうやって暴くか、だよねぇ」

 

 手段を選ばないのであれば簡単だ。

 僕が魔法でちょちょいと証拠を集めるだけでいい……だが、呪文研究者の評判も考えると、その解決策は微妙。

 僕が嘘つきにされてしまう。


「味方を増やしていくしかないかな?」


「そうね。どこまで上が噛んでいるかはわからないけど……多くの貴族連名で訴えれば上に届くかもしれないわ」


「だねぇ。こっちが切れる手札として僕の持つ特許料くらいかな?……んー。とりあえずは学園の方の伝手を頼るかな?王族の子もちょいちょい買いにくるしね。学園出張店に」


「……わ、私は役に立てるかしら」


「まぁ、基本的に交渉のカードは僕が出すことになりそうだけど……それでも、交渉自体は僕じゃなくてレゼにやってもらいたいと思っているから。僕がやるのは少しね」

 

「なるほど……確かにそうかもね。そういうことなら交渉は私に任せて頂戴。出来ることがあれば何でもこなすわ」


「うん。お願いね」

 

 レゼへと僕は声をかけた。

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こちら成金異世界転生者の魔法呪文個人特許庁~魔法呪文を大量に持つ僕は特許料だけで貴族を超える大金持ちとなり、一生遊んで暮らしたいと思います~ リヒト @ninnjyasuraimu

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