第20話
結局。
違反料金は冒険者ギルトと、違反者たちのパーティー、それに加えて他の冒険者たちもお金を出し合って払ってくれた。
「……金貨って案外重いんですね」
違反料、金貨300枚。
大量の金貨が入った袋を抱えるリスタが口を開く。
「当たり前じゃんか。何のためにリスタを呼んだと思っているのさ……金貨ってべらぼうに重いんだよ」
金貨は信じられないくらいに重い。
これを持てと言われても困るくらいには重い……いちいち魔法を使うのも面倒なのでリスタにお任せしているのだ。
「臨時収入も入ったことだし、何か夕食食べていく?」
「それは賛成ですけど、この町は辞めませんか?さっきから視線が痛いんですけど……」
「呪文研究者の特権だね。貧民たちの醜い嫉妬を特等席で見られるんだよ」
「……嫌な特権ですね」
「ふっ、かもね。リスタがそういうならこの町で食べるのは辞めようか……一旦をお金を僕のお店において、そのあとにどこか食べに行こうか……レンズ帝国でもカレナ皇国良いな。どこの国が良い?」
「そうですね……私としてはラレンシア公国が良いですね」
「ラレンシア公国……あぁ、あそこか。随分とマイナーな国を選んだね?」
特に語るところもないような小国であるラレンシア公国を一般市民でしかないリスタが知っていたことに驚きである。
「ちょっと前に吟遊詩人がラレンシア公国の特産品であるローストビーフのことを話していまして……食べてみたかったんです。一度だけ、たまたまローストビーフを食べる機会があったときにすごく感動した料理なので」
「なるほどね……確かにローストビーフは美味しいよね、うん。じゃあ、ラレンシア公国に行くことにしようか。あの国に行くのも久しぶりかも?」
「……一度、来たことがあるんですか?」
「まぁね、ちょっとした用事があって行ったことあるんだよね……あの時は大変だった。権力関係のごたごたに巻き込まれて色々あった」
「……なるほど。権力関係とか私には想像もつきませんが、面倒臭そうですね」
「死ぬほど面倒だね……自分自身が特権階級の人間であり、特権階級の人間相手に商売している僕が言うのだから間違いないよ。良し、行く場所も決まったことだし、ぶらぶら特に意味もなく街を歩くのを辞めて移動しようか」
「そうしましょう……ずっと持っているのもつらいです」
「それも君が強くなるための訓練ってことで……じゃ、行くよ。■」
僕は魔法を発動させ、自分とリスタを空に飛ばして移動を始めた。
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