第8話
一学年大体20名のクラスが5つ。
六学年あるので学生の数は大体600人前後。
未だに社会全体の文明度がちょうど中世と近世の瀬戸際ぐらいにあるこの世界で600人前後の学生がいるこの学園は世界でも有数のマンモス校と言えるだろう。
「アレス・ヴィンセントです。趣味は読書と料理。平民の出ですが、クラスのみんなが仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
「自己紹介ありがとうございました。クラスのみんなもぜひ仲良くしてあげてください」
三年Bクラスへと転入することに決まった僕は朝の時間、何も知らされていない担任の先生の指示で教室の前に立ち、自己紹介をしていた。
僕の自己紹介は同じクラスメートたちからそこまで大きな驚きもなく受け入れられる。
ちなみに結構著名な呪文研究者である僕だが、その実、名前は知っていても実際の姿を知っている人の数は少ない。
お店に来る人なんて基本的にいないし、団体で取引している太客とかも取引の場に代表が来るだけ。
実は全然交流がなく、僕が14歳のガキだということは案外知れ渡っていないのだ。
特に貴族とかになると。
街の人とかになると僕が普通に近所付き合いをこなしているので知っている人もいるんだけどね。
「じゃあ、アレスくんはあそこの窓側の席に座ってくれるかな?」
「わかりました」
僕は担任の先生の言葉に頷き、示された席へと座る。
……一番後ろの窓側の席。大当たりだな。
「これからよろしくお願いします」
僕は自分の右隣に座っていた少女へと声をかける。
僕の隣の少女は肩まで伸びた白色の髪に透き通るような白い瞳を持ち、泣きぼくろが特徴的な可愛い子であった。
耳につけられたいくつかのピアスと首元のシンプルな黒色のチョーカーを身に着けており、身だしなみもリスタとは違ってちゃんと綺麗に整っている。
パッと見の印象としてはすごくクールそうな見た目の子である。
「……」
「……」
「……え?無視?」
「……」
僕の挨拶に対して少女は僕の言葉に何の言葉も返さないどころか視線を一つもこちらへと向けてくれない。
クールっぽそうだからって無視は酷くない?せめて素っ気ない返事くらいは頂戴よ……そんなにも僕と話すのが嫌か?
僕の見た目は絶世の美少年と言っても良いような顔の整い方をしているというのに。
僕の自信の一つが無残にも砕け散ったよ、まったく。
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