42.【柔道整復師】

 ○月〇日。

 俺は、鍼灸師で柔道整復師である、辻友紀乃治療院にやって来た。

 先日の「浮気調査」で、依頼主の奥さんに跳ね飛ばされ、脱臼したのだ。

 整形外科では、時間もかかるし、上手くない。結局、高くつく。

 俺の高校の「茶道部」の先輩のところに治療に来たのだ。

 友紀乃先輩は、鍼灸師でもあり、柔道整復師だ。昔風に言えば、「骨接ぎ」だ。

 治療は数分で終った。ゴッドハンドである、先輩にも難点はあった。

「色気過剰」なのである。実は、俺は、先輩に『童貞』を奪われた。

 ストーカーをしている訳ではないが、会う度に誘う。

「終ったで、幸田。」俺が服を着ていると、「ほら!」と先輩は言って、白衣を広げた。

 勿論、衣類は身に着けている。まるで、変態親父みたいなギャグに辟易している。

「相変わらず、ですね。」「お茶たてるのも上手いけど、それを立てるのも上手いやろ。反応するくらいやから、もう大ジョブや。幸田、何でワコと一緒にならへんかった?折角譲ってあげたのに。」

「先輩が『譲ってあげるわ』なんて言うたからでしょ。」「姉さん女房に気兼ねせんと、いつでも不倫の相手してあげるからな、幸田。」

「要らんお世話ですわ。」俺は料金を払い、治療院を出た。

 未だに独身なのが、不思議な人だ。

 クルマに帰ると、スマホが鳴動した。所長だ。

「幸田。いしゃ、終ったか?」「はい。」「花ヤンと横ヤンの応援に行ってくれ。第三者が割り込んで来たらしい。」「了解です。」

 俺は、深呼吸すると、クルマを発進させた。

 ―完―



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