【偽警官】
○月〇日。
西成区。昼過ぎ迄、浮気調査をして、遅い昼食を終えた俺と倉持は、放火現場を目撃した。
現場を去ろうとした犯人を2人で押さえつけ、俺は119番をした。
何かの薬を使ったのか、もうボヤでは済まない火事になっていた。
近所の商店から駆けつけた人達が、必死にバケツリレーを試みたが、敵わない火の勢いだ。
警察官が、やって来たが、俺達が取り押さえている男を連れ出そうとした。
そこへやって来た、もう1人の警察官が、「ほむら警部です。」と言い、「ご苦労様。」と、先の警察官に言って、2人で連れ去ろうとした。
そこに、パトカーに乗った、佐々ヤンこと佐々刑事と真壁、芦屋一美が現れた。
「ああ、佐々ヤン。偽警察官や。」と、2人を指さした。
「テロ対策室の佐々や。身分証を見せて貰おうか。」
2人が見せた警察手帳は、黒い、『昔の』警察手帳だった。
真壁と一美は、容赦無く警察官風の男と、放火犯を引っぱたいた。
俺と倉持と佐々ヤンは、知らん顔をした。
男達が喚いたが、「真壁、あれ、持って来て。」と、一美が言った。
真壁は、パトカーから、何故か『孫の手』を出した。
一美は、それを受け取ると、「今日は化粧のノリが悪いのよねえ。」と言って、警部と名乗った男の股間を孫の手で叩いた。
すると、ズボンの間からナイフが落ち、ズボンに血が広がった。
男達は、更に喚き始めた。
午後4時。
おやつには遅いが、俺達は澄子の店で「宇治金時」を食べた。
「偽警察官って、すぐに分かったの?」と澄子が言った。
「衣装はナア、コスプレ物じゃないことは分かった。コスプレで『普通の』警察官の格好することはない。ヒーロー警察官の格好はあるが。インターネットで買ったものやろうな。」
「それにね、奥さん。僕達が取り押さえていて、事情も聞かず連れ出そうとするのはおかしい。3人目の男は『警部』って、身分を言った。普通は、名前や所属を言うものですよ。」と、倉持が言い、俺は言った。
「佐々ヤン達への挨拶、敬礼一つ無かった。最後に、警察手帳が、昔の映画に出てくるやつ。もう笑いたくても笑われヘン。一美の話では、同じ時間で放火があって、そのグループから、あの現場を知ったらしい。どんな『取り調べ』やったんかなあ。」
3人で、思い切り笑った。
スマホが鳴った、。俺はスピーカーをオンにした。
「アルフィーズの模倣犯らしい。どこかから、ChotGPTを手に入れたんやろうなあ。妄想で計画し、現実で、簡単にお縄、ちゅう訳や。さっき、テロ対策室から資料が届いた。直帰してくれ。」「了解。」
俺達は、『おひや』が入っただけのグラスで乾杯した。
―完―
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