10.能力値の変化
――爆発。
突如俺の前方に発動した状態異常強制解除爆発「イノセンス・エクスプロージョン」は一発だけではない。
俺の周囲では更に次々と同じ爆発が起こり、接近していた【リア充】達を容赦なく巻き込んでいく。
「「リアー!?♡」」
こうして無詠唱で魔法を使うのは結構な集中力がいるが、代わり短いスパンで何度も魔法を発動させることが出来る。
【
勿論俺は畏怖状態になどならず、魔法の発動は止まらない。威力が無ければその自動カウンターも発動しないという仮説はどうやら正しいようだ。
俺のこの爆発魔法は、果たして今どのような扱いになるのだろうな。
兵士達が【リア充】達に効かないと言っていた「状態異常回復」でもない、「状態異常強制解除」だ。これは最早攻撃魔法どころか回復魔法ですらないのだ。
まあ、効くのであればなんでもいいさ。
そうして爆発は凄まじい勢いで広がり、あっという間に檻にいた全ての【リア充】を包み込んでしまった。
□■□
森に倒れ伏す、【リア充】であった者達――今は元に戻り、気絶している犬人達を見下ろして小さく一息つく。
もう動いている者はいない、これで全部のようだ。
問題は彼らをどうするか、だな。
「状態確認」のスキルで調べたが、俺の爆発は『オウキ・セーユの加護』とやらの状態異常……状態強化効果も解除してしまっている。
あれが彼らをモンスターから守っていたようなので、今の状態では普通にモンスターに襲われてしまう。
【リア充】になってはいたものの、元はなんの罪も無い人々だ。ここで食い殺されるのは俺の寝覚めが悪くなる。
とりあえず、気絶している間の安全だけは保証してやるか。ここに、「魔除けの結界」だけは張っておいてやろう。
本当は彼らが森から出るまでモンスターから直々に守ってやりたいところだが、俺の姿は晒せない。
各々目覚め次第、気を付けて森から抜けてくれ。
そのままこの場を去ろうとして……身体に少し違和感を覚える。
「む?」
悪い感覚ではない。寧ろ、何やらさっきよりも力がみなぎっているような……。
「……おい、まさか」
俺はすぐに「能力情報開示」のスキルを発動し、自分の能力値を見た。
――――――――――――――――――
テイドー・インキャリオ
クラス:【
〈能力値〉
・体力:678
・攻撃:46
・魔法:<0>(魔法能力値ゼロの呪い発動中)
・防御:101
・魔防:1544
・技巧:85
・俊敏:837
〈クラススキル〉
『理魔法使用適性【極】[パッシブ]』
『理元素混合[パッシブ]』
〈フリースキル〉
『回復魔法使用適性【中】[パッシブ]』
『剣使用適性【小】[パッシブ]』
『魔力上昇(呪いにより無効)』
『魔法効果範囲拡大』
『自動魔法迎撃』
『能力情報開示』
『気配隠蔽』
『状態確認』
――――――――――――――――――
「……!!」
相変わらず魔法の能力値は0だ。しかし、俺はその小さな変化を見逃さなかった。
ここしばらくの間、ある程度頭打ちになってしまいほぼ伸びなかった能力値が。
勿論この一ヶ月、いくらゴブリンやコボルトを狩りまくろうが、ほぼ上がることのなかった能力値が。
――「技巧」という能力値が、この戦闘を行っただけで確かに6も上昇している。
なぜだ、と喜びよりも先に困惑を覚える。
その原因自体は明白で、俺が今大量の【リア充】を爆発させたからだろう。
あれで「倒した」ことになったみたいだが……どうやらこいつらは、倒すことでより技巧の能力値を滅茶苦茶上げてくれる変わった敵のようだ。
倒した敵によっても上がる能力値というものは変わってくる。
俺達は相手の動きを見て、無意識に何かを学んでいるのだろう。
そもそも単純に弱い奴を倒しても少ししか能力は上がらないし、強い奴を倒せばたくさん能力は上がる。
しかしただそれだけの法則には留まらず、例えばとても素早い奴を倒せばこっちの俊敏の能力値も多く上がり易かったりもするのだ。
しかし、たくさん倒したとは言え技巧をこんなにも短期間で上げてくれる存在は本当に珍しい。
少なくとも、俺は今までそんなモンスターと出会ったことはなかった。
俺の力が奪われる以前、俺の爆発魔法の威力は正直とんでもないことになっていた。
戦ってきた敵であれをまともに耐えられたのは、【
俺がパーリー以外の奴との決闘をなるべく避けていたのもそれが理由だ。
その代わりに、俺はモンスター相手には積極的に戦ってきた。
並の冒険者では束になっても勝てなさそうなモンスターだって一人で倒した。
そんな奴らと戦えば勿論俺の能力値もばんばん伸びまくった。そして伸びきった結果が、今の能力値に落ち着いたというわけだ。
それでも、攻撃の能力値は物理攻撃で戦ってこなかったので伸びにくいのは当然だったが、防御と技巧という能力値の伸びにくさは嫌でも目立っていた。
数多の強モンスターと戦ってようやく100行くか行かないかとかいうレベルだ。
これも【
しかし、この二つはどちらも俺にとってはさほど必要な能力値でも無かった。
「防御」。物理攻撃への耐性に関わるこの能力値は、そもそも離れた位置から一方的に倒せる俺には関係無い。
【
そして今回上がった「技巧」という能力だが……これが一番分かりにくくて地味な能力だ。
【
しかし魔法というものがそもそも攻撃範囲の広いものが多く、刃や矢程の命中精度は要らない。具体的な数値で言えば40くらいもあれば、まず外すことは無いだろう。
……いや、待てよ。魔法だけで言えば、確かこの技巧の効果はもう一つあったな。
どちらにせよ地味なのですっかり忘れていたのだが、「魔法の特定効果が強化される」だったか。
これは魔法威力に直接の変化を与えるものではないが、魔法によって引き起こされる現象の一部がより強く出るようになるというものだ。
例えば風魔法であれば、技巧の能力値を上げた分、起こせる風の風速を強く出来る。
氷魔法ならば、より温度を低くすることが出来る。
そして火魔法ならば、より多くの熱を発することが――
「……っ!?」
――この時、俺の脳裏に閃光が走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます