5 浮気の疑い

「どういうことだ?陽菜?」


 ……昨日は、たしかに陽菜以外の人達と遊びに行った。ただ、6人でいったし。


 そんな浮気を疑われるようなことは断じてしていない………はず…?


「えぇ。染井さんから、あなたと結城さんがやけに親密な関係だったって聞いたんですけど??」


「そんな、普通の友達だけど?」


 ……普通の友達って、浮気してる男が使う言い訳の常套句だったっけか?


 そしたら、なんか俺が浮気してるみたいになっちまう…。


「普通の友達は、岩陰で二人で一緒にいたりしないんですよ!!!!」


 ………あ。それのことか。たしかにそれは、浮気してるって言われても仕方がない。ってか染井さんたちにバレてたのかよ!!


 とりあえず、だ。どうにかして誤解を解かないと…。


 そう思ったが、陽菜はまだ話し続ける。


「湊さん、最近結城さんとすごく仲がいいですよね。私は、小野田みたいに独占するような女にはなりたくなかったので我慢してたんですけど、流石に浮気を疑っちゃいますよ…。」


「………ごめん。本当に、浮気してるわけじゃないんだよ。俺が好きなのは、陽菜なんだ。」


「そんな、岩陰で二人でいたら、心配になっちゃうじゃないですか…。しかも湊さん、気づいてないですよね?」


 気づいてない…?何にだ?けど、今はそれよりも陽菜に謝ることが優先だ。


「……ごめん。もうそんなことはしないようにするから。それと、気づいてないってなんのことだ?」


「ほら、やっぱり気づいてない……。それよりも!絶対にもうしませんか?」


「……ああ。しないよ。絶対に。」


「じゃあ、その誓いと、私への謝罪の気持ちを込めて、ハグ、してください。」


 ………それって俺得じゃないか?そんな、拒否するわけがないじゃねーか。


 俺は、謝罪の気持ちを存分に込めて、陽菜にハグをする。


「……もう、許しちゃいます。」


「……陽菜、大好きだからな。この気持ちは、変わることはないから。」


「……えぇ。私もですよ。」




 _______




 長いハグが終わり、二人でこれからデートに行くことになった。そこへ行く最中、陽菜がこんな事を聞いてきた。


「で、結城さんとは何を話したんですか?」


「……あぁ、あの、なんか俺と結城さん、小さい頃からの知り合いだったみたいで。」


「あら。それは良かったじゃないですか。」


 ……義妹かもしれないってこと、伝えたほうがいいのかな。


 むぅ………


 伝えるか。


「で、なんかもしかしたら、結城さん、俺の義妹なのかもしれないって思って。」


「………」


 伝えないほうが良かったのかもしれない。選択ミスったのかな。


「義妹かもしれないからって、………心変わりは、しちゃだめですからね?」


 あぁ。良かった。なんか悪かったわけじゃなかった。


「するわけ無いだろ。俺が一番好きなのは陽菜なんだから。」


「なら、安心ですね。」


 ……本当に、陽菜と出会えて良かった。こんなにいい彼女、これから出会えないんじゃないか?


 だから、失わないようにしないと。俺が、一生大切にするんだ。


「………湊さん?行きましょう?」


「よしっ!行こうか!」





 _______






「あ、一個言ったほうがよかったことがあって。いままで言うのわすれてたんですけど。」


 帰り道。陽菜が、こんな事を話しかけてきた。


「どうしたんだ?」


「私の、家庭環境の話です。」


「うん。聞くよ。」


 どうしたんだ?そういえば、聞いたことなかったけど。


「実は、私の親って、バツ2なんですよね。」


「……そうだったのか。」


 知らなかった。俺と同じ境遇だったなんてな。けど、どうしたんだろう。複雑な境遇だったのか?


「……それで。二人目の奥さんとは私が6歳のときに別れたんです。で、それからはお父さんに育ててもらってるんですけど。」


「……うんうん。」


「だから、私が言いたいのは、」


 そこで一旦言葉を切って、次に陽菜は



「私を嫁に取りたいときは、私の父に勝ってくださいね?ってことです。」



 ……そういうことかぁ…。俺だって、頑張る必要があるんだなぁ…。


「分かったよ。その時は俺も、頑張らないとな。」


「はい。待ってますからね。」



 その後のデートは、やっぱり最高の思い出になったのであった。

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