4 許さない
私の家に向かっている途中、お互いに無言であったものの、私の心は幸福感でいっぱいだった。
はぁぁ……幸せすぎてため息が出ちゃう。
彼が、私の家に来るなんて。本当に、幸せ。
あっ。気づいたら私の家についちゃった。本当はもっと二人で歩いてたいんだけどなぁ…
けど、彼の話を聞かないと。
「ここが私の家です。」
「えっ。?広くない……?」
「そうですか?普通だと思いますけど…まぁ、とにかく入ってください。」
たしかに昔から少し周りの家よりは広いなぁ…とは思ってたけど、友達を呼んだのなんて一回もないし、分からなかったな。私、昔から友達がいなかったし。
彼を私の家の中のリビングに通して座ってもらい、私が正面に座る。
なんかこれ、私が彼を尋問してるみたいなんだけど。
……いいかも。
「じゃあ、聞きますね。どうして、今日はこんなに元気がなかったんですか?」
「これは、結構重い話だよ。友達には普通は話さないことだと思う。ましてや女子になんてさ。それでも、聞いてくれるの?」
「えぇ。私はあなたの話を聞くって決めましたし。このことは口外するなっていうんならそれだって守ります。」
せっかく彼と仲良くなれるかもしれないチャンスなんだし、どんなことだってする。
っていうか、それよりも今私のことを友達って言ったわよね!?やばい。ニヤケちゃうかも。抑えないと…
「……そうか。俺がしんどいのに気づいてくれたのは君だけだよ。ありがとう。まず、俺に彼女ができたのは知ってるか?」
えっ…。彼に彼女…?私の彼に彼女ができたって言うの?許さない…。どうせ小野田でしょう?くそっ!
「彼女……あ、小野田さんのことですか?」
「そうだ。あいつ。俺の小学校の時からの片思いだったんだが、高校に入って中学の時よりも話すようになって、距離が縮まったかなって思ったから、昨日の俺の誕生日に告白したんだ。」
……ほら、やっぱりあいつだ。
「それは良かったじゃないですか。けど、良くない理由があるんですよね?」
本当は全く良くない。彼にあんな奴が彼女になったって時点で頭がおかしくなりそうだ。
けど、そんなこと言ったら私に何も話してくれなくなるだろうから、あくまでも平静を保って…。
「うん…。その日の夜、用事があって家の近くのコンビニに行ったんだ。」
「はい。そしたら?」
「そしたら、あいつが見知らぬ男と歩いててな…。手を繋いで、仲良さそうにして。」
それって浮気ってことですか?許せない……許せない……許せない……私の彼と付き合ったのに、その日のうちに浮気するなんて…
彼の彼女じゃなくても怒りが湧いてくるのに、よりによって彼の彼女がこんなことをするなんて…
「その後、あいつらホテルに行ったんだ。信じられるかよ、こんな、こんな…………」
彼の目から涙が溢れてくる。辛かったんだよね。私が慰めてあげないと。
「湊さん!!」
私は名前を呼んで、彼の顔にハンカチを当てる。
「湊さん、泣いてます。気づいてないかもしれませんけど、泣いてます。しんどかったんですよね。一旦落ち着きましょう。私はいつまでも待ってますから…。」
「ああぁぁぁあぁぁあ!!!」
彼は叫んだあとに、泣いて、泣いて、泣き叫んだ。
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