3 私の彼
あれから何分経っただろうか。あのあとも陽菜に抱きしめられた俺は、段々と正気を取り戻していた。
「……ありがとう。陽菜。もう大丈夫だから。」
「そうですか。それで、もう一回確認しても大丈夫ですか?しんどいってなら後日にしますけど…」
「大丈夫だよ。今日のうちに全部話しておきたいんだ。」
「じゃあ確認しますね。まず、小野田さんと付き合ったけど、その日の夜に男と歩いてるのを見つけたんですよね?」
「……そうなんだ。とりあえず尾行して、あいつらがホテルに入っていくところの写真は取れたんだけど……」
「……そうなんですね。辛い中、よく頑張りました。すごいです。それで、湊さんはまだ小野田さんと付き合いたいって思ってるんですか?」
……誰があんなビッチと好き好んで付き合うか。もう俺の心はあいつには一ミリもない。
と、思いたいけど、少しくらいこれが嘘だったらなって思う気持ちもある。けど、今は、
「いいや。痛い目見せてやりたいって感じだ。」
っと答えておこう。
「わかりました。じゃあ、私も協力します。」
「えっ?いいのか?二人のほうが安心できるしすごい嬉しいけど…、なんか申し訳ないな。」
「いいんです。私が協力したいんですから。まず、今のままでは証拠が少し足りない気がするので、もう少し泳がせて確たる証拠をとりましょう。」
正直、この状態が続くってのはかなり辛い。けど、あいつに復讐できるんだ。もう少し我慢しないとな。
「……わかった。俺も、今まで通り頑張るよ。」
お互いに協力関係を結んだところで、今日は解散となった。
______
私の思い人、田上湊君の様子がおかしいな、って気づいたのは今日の朝の話。
いつもは明るい彼が今朝はどんよりとしていて、まるで彼女に振られたみたいな。
けど、彼には彼女なんていないはずなのに。私が彼のことは一番知ってるはずだから。
本当はずーっと彼の様子を見ておきたかったんだけど、私は図書委員。昼休みと放課後は彼のことを見られなくなってしまう。
はぁ…。本当に憂鬱。って思ってたんだけど、なんと今日は放課後にあの彼が一人で図書室に来た。
えっ。どうして。いつも一緒にいる小野田さんはどうしたんだろう?
あいつがいるから私が彼に近づけなかったのに。
今日に限ってあいつがいないなんて。
けど、これは逆に考えればチャンスなのでは?彼のことは心配だし、話を聞くのとついでに彼と話すことができるんじゃないの?
さぁ。勇気を出せ、私。
………勇気を出せず、彼のことをずーっと見つめて5分。
あぁ、やっぱり私は彼に話しかけられずに、こんなチャンスも逃すんだ。と、思っていたのに。
「どうして俺のことをずーっと見てるんですか?」
なんと彼の方から話しかけてくれた。はっ。話さないと…
「いっいや…その……今日のあなた、精神的になんかしんどそうだなって思って。」
あっあっ…。こんなの挙動不審な人じゃん…。
「あのぉ…。申し訳ないけど、誰だっけ?」
まぁ…そうだよね…陽キャの彼がこんな教室の隅でいるような女の名前を知ってるわけないよね。おんなじクラスだからワンちゃん知ってるかなって思ったけど、ただの自惚れだよね。
「えっ…。まぁそうですよね。こんな友達もいない根暗のことなんて覚えてるわけ無いですよね。ごめんなさい。名前は唐沢陽菜って言います。けど、こんなやつに話しかけられたって何も言いたくないですよね。じゃあ行きますので。ありがとうございました。」
そうだよ。そもそも私が彼に話しかけようとすること自体が間違ってたんだ。
「いや、待って待って。忘れてたのはごめんって。とりあえず、なんで俺がしんどそうってわかったんだ?」
……こんな私に話してくれるんですか?いいんですか?こんな女と話してて。あなたはほぼ彼女みたいな人がいるでしょうに。
「………まぁ、いつもと比べて元気がなかったんですよね。いつもは私とは正反対の陽キャの方なのに、今日はなんか静かだなぁって。」
「けど、ただの体調不良かもしれないじゃないか。」
そんな、体調不良と病んでるのをわからないわけないじゃない。私がどれだけあなたのことを見てると思ってるの?
けど、ここでそんなことを言ったら絶対ひかれるよね…。
「じゃあ、精神的にしんどいわけじゃないんですね?もしそうなら私で良ければ話聞きますけど…。……やっぱり私なんかに話したくないですよね。ありがとうございました。」
多分彼は私なんかには話してくれないだろう。やっぱり私は教室の隅で彼のことを見ているだけでいいんだ。
「……聞いてくれるのか?」
へっ!?今なんて??私に話してくれるってことですか?落ち着いて!私。
「えぇ。私で良ければ。」
「じゃあ、ここじゃ話せないから二人になれるとこがいいんだけど…。」
チャンス!!私の家に誘ってみせる!
「なら、!私の家に来てください!!」
「オッケー。ついてくわ。」
よっしゃぁ!!!彼がオッケーって言ったあとにキョドってたけど、もう言質とったんだからね。
________
明日からは、夜の8時に投稿します!
このお話が、いいなと思ってくれた方は、フォロー、星、応援お願いします!
ランキング……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます