2 気づいたのは君だけ

 初めて行った図書室だが、案の定静かだった。というか、人がほとんどいなかった。


 今の俺には、これくらい静かな方がちょうどいい。席に座って、自習を始める。


 5分ほど経っただろうか?何もおかしなところはないだろう。俺以外の人からすれば。


 けど、俺はさっきから視線が向けられていることに気づいていた。


 普通であれば誰からの視線なのかを探るところだが、なにせここは人が少ない。探すまでもなく見つかった。


「どうして俺のことをずーっと見てるんですか?」


 あれ?この人、どこかで見たことあるような…?確か、同じクラスの……


「いっいや…その……今日のあなた、精神的になんかしんどそうだなって思って。」


「あのぉ…。申し訳ないんだけど、誰だっけ?」


「えっ…。まぁそうですよね。こんな友達もいない根暗のことなんて覚えてるわけ無いですよね。ごめんなさい。名前は唐沢陽菜からさわひなって言います。けどこんな奴に話しかけられたって何も言いたくないですよね。じゃあ行きますので。ありがとうございました。」


 ……うん。すっごい早口だし、ネガティブ思考だし。とりあえず、引き止めないとなぁ。


「いや、待って待って。忘れてたのはごめんって。とりあえず、なんで俺がしんどそうってわかったんだ?」


「……私なんかと話してくれるんですか?まぁ、いつもと比べて元気がなかったんですよね。いつもは私とは正反対の陽キャの方なのに、今日は静かだなぁって思ってたんで。」


「けど、ただの体調不良かもしれないじゃないか。」


「じゃあ、精神的にしんどいわけじゃないんですね?もしそうなら私で良ければお話聞きますけど…。……やっぱり私なんかに話したくないですよね。ありがとうございました。」


 なんかテンションがすごい人だなぁ…。相変わらず早口だし。ってか今、話を聞いてくれるって…?


 普通なら話す気なんてないけど、なんかこの人には話してもいい気がする。友達がいないみたいだし。


「……聞いてくれるのか?」


「やっぱり精神的にしんどかったんですね?私で良ければ、全然話聞きますよ。」


「じゃあ、ここじゃ話せないからどこか二人になれるとこがいいんだけど…。」


「なら、私の家に来てください!!」


「オッケー。ついてくわ。」


 ………オッケーって言ったけど、今なんて言った!?!?唐沢さんの家に行くって!?


 おいおいどうなるんだよ…。





 _______




「ここが私の家です。」


「えっ?広くない…?」


「そうですか?普通だと思いますけど…。まぁ、とにかく入ってください。」


 唐沢さんの家に入り、リビングに通される。良かった、親はいないみたいだ。


「ここに座ってください。」


「おっ…おう。」


 唐沢さんは俺の向かいに座ると、真剣な面持ちで尋ねてきた。


「じゃあ、聞きますね。どうして、今日はそんなに元気がなかったんですか?」


「これは、結構重い話だよ?友達には普通は話さないことだと思う。ましてや女子になんてさ。それでも、聞いてくれるの?」


「えぇ。私はあなたの話を聞くって決めましたし。このことは口外するなっていうんならそれだって守ります。」


 ……そこまで言ってくれるなら話そうか。


「そうか、俺がつらいのに気づいてくれたのは君だけだよ。ありがとう。まず、俺に彼女ができたのは知ってるか?」


「彼女……あ、小野田さんのことですか?」


「そうだ。あいつ。俺の小学校の時からの片思いだったんだが、高校に入って距離が縮まったかなって思って、昨日の俺の誕生日に告白したんだ。」


 今となっては告白したことをめっちゃ後悔しているがな。


「それは良かったじゃないですか。けど、良くない理由があるんですよね?」


「うん…。その日の夜、用事があって家の近くのコンビニに行ったんだよな。」


「はい。そしたら?」


 ……辛い。こんなことを人に言うなんて嫌だ。けど、彼女は聞いてくれようとしてるんだ。俺も、話さないと。


「そしたら、あいつが見知らぬ男と二人で歩いててな……手を繋いで、仲良さそうにして…」


「………」


「その後、あいつらホテルに行ったんだ。信じられるかよ?こんな、こんな……」


「湊さん!」


 急に名前を呼ばれ、顔にハンカチが当てられる。


「湊さん、泣いてます。気づいてないかもしれませんけど、泣いてます。しんどかったんですよね。一旦落ち着きましょう。私はいつまでも待ってますから。」


「あぁぁぁあああ!!」


 彼女からかけられた優しい言葉に、俺は涙を止めることができなくなった。


 まるで友達と喧嘩した子供のように泣き叫んだ俺を、は優しく抱きしめてくれていた。







 _______







 正ヒロイン、登場です。


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 やっぱりランキング上位に入りたいんです…


 今日は夜にもう一話投稿して、明日からは夜の8時くらいにあげるつもりです。


 よろしくお願いします。

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