第18話 同族
襲い来る巨大な山賊刀。
凄まじいスピード。回避も間に合わない。
否。
最初から回避など選択肢にない。
ゴートンは飛来する巨大な刃を正面から受け止める。
左肩から鉄の刃が侵入し、肉や骨を切り裂き、体の中心部まで一気に振り下ろされる。
普通ならばこれでジエンド。確実に相手の命を刈り取る一撃だ。
しかし、ゴートンはスキル”自己再生”を発動。刃が切り裂いたさきから傷は超スピードで再生を始め、刃を振り下ろした時にはすでに完治している。
あまりに非現実的な再生速度。しかし、ゴートンは外れと揶揄される治癒術のスキルを、かつて誰も無しえなかった領域まで高めた例外的な存在。
”即死さえしなければすべての傷を癒せる”
という馬鹿げた性能の治癒スキルと、獣人が本来持つ強靭な肉体の相性は言わずもがなだ。
攻撃後、隙だらけになったタウロスに向かって、ゴートンは固く握りしめた木製のスタッフを、下から相手の顎に向かって思い切り振り上げる。
折れず曲がらずと言われる”世界樹”の枝を削り出して作られたゴートンお手製の魔法触媒は、攻撃に用いれば下手な鉄製の武器よりも凶悪だ。
ゴートンの怪力で振りぬかれたスタッフの一撃がタウロスの顎にクリーンヒット。たまらずタウロスは一歩後ずさる。
ゴートンは振り上げたスタッフをそのまま大きく回転させ、体勢を崩したタウロスの牛頭を、思い切り打ちぬいた。
肉を打つ湿った音が響く。
尋常な相手ならこれで勝負は終わり。しかし、頭を打たれたタウロスは、フンと鼻を鳴らすとゆっくりと上体を起こした。
「……驚いた。この俺と正面から打ち合おうというのか」
そう言ってタウロスはおもむろに自分の武器の刃部分を右手でつかみ、そのまま素手で鉄の刃を砕いた。
見せつけるようにゴートンの目の前で手を開く。
パラパラと地面に落ちる武器の残骸。タウロスは嬉しそうに口元を歪ませる。
「上品なふりをしているようだが……見たらわかる。お前も好きなんだろ?喧嘩がよ」
「……見たらわかる?その目は節穴じゃないのか?私が喧嘩好きなどと……」
ゴートンの言葉を、タウロスは右手の人差し指を自身の唇に当てて、ジェスチャーで遮った。
「言葉は不要だ……さあ、拳で語り合おう」
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