第12話 むかしむかし

 世界には4つの種が存在する。

 すなわち「エルフ」「ドワーフ」「獣」「ヒューマン」。

 「魔法に秀でたエルフ」「頑強さと手先の器用さで道具の扱いに秀でたドワーフ」「頭は良くないが、戦闘能力において圧倒的なアドバンテージを持つ獣」「他の追随を許さない圧倒的な数で攻めるヒューマン」

 かつて、各勢力のパワーバランスは拮抗していた。

 しかしある時突然、世界のバグともいうべき存在が現れる。

 ”王”の職業を持って生まれた獣。

 明晰な頭脳を持ちながら獣の戦闘能力を有する最強の個体。

 彼の出現を機に、獣の中に突然変異ともいうべき個体が次々に生まれ始める。彼らは自らを”獣人”と名乗った。

 最強の戦闘能力を持つ獣が、その唯一の弱点を克服した瞬間だった。




 獣の時代

 獣たちは最強の王の元、他種族を蹂躙した。力が全てを支配する、まさに弱肉強食の時代。他の種族は知性を持った獣になすすべも無かった。




 そんな中、ヒューマンから「勇者」と呼ばれる個体が出現。

 勇者はヒューマンをまとめ上げると、獣に虐げられてきたエルフ、ドワーフと同盟を組み獣王へ戦争を仕掛ける。

 長き戦いの末、勇者率いる連合軍が獣王を下し、ヒューマンの時代がやってくる。

 戦いに敗れた獣たちは、その名前すらヒューマンたちに奪われ、「魔なるモノ」やがては「魔物」と呼ばれるようになった。




 勇者は政治も巧みで、最初はエルフやドワーフを同胞だともてなし、しかし王の座は譲らなかった。

 ヒューマンもエルフもドワーフも、誰も気が付かぬくらい僅かずつ、勇者は自らの権威を確固たるものとし、ヒューマンこそが世界の覇者であり、スタンダードだという常識をつくっていく。





 むかしむかしの物語。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る