第10話 円卓
「最近”獣”たちに不穏な動きがあるようだ……もしかしたら獣人の中から、また”王”の職業を持つ個体が生まれたのやもしれない。冒険者たちから何か報告はないのか?」
「今のところは何も……魔物が活性化しているとの報告はありますが”王”らしき個体の報告はありません」
「そもそも獣人が人前に現れる事は稀だ。それは”王”とて同じことだろう」
「その通り。”王”が目撃されたという事は、即ち獣たちがすでに準備を終えているという事と同義……だからこそ先手を打たねばならない。杞憂であればいいが、調査はすべきだろう」
薄暗い室内。わずかな蝋燭の灯りが円卓を照らす。
ぐるりと円卓を囲むようにして座る人影が11。一つ空白の席がある。
重苦しい空気の中、部屋のドアが開かれ一人の男が入ってきた。
金の意匠が施された純白のローブに身を包んだ青年。ブロンドの髪は短く刈り込まれ、耽美な顔には薄っすらと笑みが浮かんでいる。
「すまない。少し遅れてしまったようだね」
言葉では謝罪しているが、彼は全く悪いとは思っていないようで、笑顔のまま着席する。そして周囲の人たちは、誰も彼を咎めなかった。
それもそのはず。彼こそは人類の希望。かつて人類と亜人をまとめあげ、魔王を打ち破ったという英雄の末裔。
人類の守護者”オリオン”なのだから。
「それで、魔物の動きに異変があるのだったかな?」
「ええ、最近強力な魔物が次々に……”王”出現の前触れかと」
「なるほど……であればギルドに寄せられた強力な魔物の出現状況をまとめてくれるかな。強力な魔物の目撃例が多い場所を順に調査してみよう」
「冒険者に依頼しますか?」
その問いに、オリオンはにこやかに笑いながら首を横に振った。
「簡単な依頼なら冒険者に任せてもいいのだけどね、これは人類の未来がかかっている重要な仕事だ、人には任せられないな。だから僕が受け持つよ」
オリオンの言葉に、その場にいた11人がざわつく。
「つまり……あの伝説の守護騎士団を!?」
「あぁ、今こそ彼らの出番だろう。これは人類を守るための戦いなのだから」
その言葉に、場の空気が緩む。
安堵のため息をつくもの、感謝の祈りをささげるもの、皆この発言により、問題は解決したと言わんばかりの行動だった。
オリオンは立ち上がって伸びをする。
「さて、堅苦しい会議はこれで終わりだ。こんな薄暗いところに長時間いたら体に悪いからね。君たちも後は僕に任せてゆっくりお茶でも飲んでいればいい……僕がいる限り、人類に危機なんてありえないのだから」
◇
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