第8話 海を渡る

 うっすらと緑の島が見えた。木が恋しい。

 

 海を泳ぐ、脚を動かしてもあまり進まない。

 頭を水に潜らせると、手足がない魚がすごい速さで泳いでいる。脚があるから速く動けるわけでもないのか。不思議だな。


 お腹がすく。頑張って、飛んでみようと翅を使う。水に浸かった体が重く体が浮いてこない。それでも体は前へと進む。

 いくら進んでもどこまでも壁が無い。

 ジワリと体が熱くなる。力がゆっくりと体を満たす。

 ひょっとしたら、食べ物が無いと死ぬのかな?

 死んでも死ぬのかな?

 くるくる考えながら止まらない、とまれない。今は前へ進みたい。


 ふいに、心の中に心があるような、そうサナギから成虫になるときのような熱い自分の中の自分を感じる。力が湧く。

 

 進むにつれて島が大きくなる。それ以外の景色はかわらない。まるで動かない高く積み上げられた雲、僕を押しているのか引いているの分からない波。たまに手足をつっつく魚がくすぐったい。

 砂浜が近づく。もう翅の付け根がピクピクしてしんどい。あとすこしが長い。


 脚が浜の砂につき、安堵する。ひどく体が重く翅をうまく畳むこともできない。体が水から、上がるほどに自分の体が重くなる。

 よろめき、踏ん張る脚が砂に沈む。お腹が地面に着く熱い。喉の渇きがたまらない。太陽は高くから容赦ない日差しを刺す。

 細い木の上に、大きな実を見つける。大きな角で木を挟みこじり折る。

 実を角で挟み砕くように割ると、中にはゼリーのような白いプルプルがある。

 

 うまい!


 プルプルのうまさが全身のすみずみまでにいきわたるようだ。残りの木の実もちぎり取り、日陰に入りへたり込む。

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