第9話 夢と現
夢から醒める。デカはとっても大きくて、僕より大きかった気がする。木をへし折るぐらい力持ちだ。
喉が渇く、ふんわりと優しい疲労感が鼻の奥にある。立ち上がるころには夢はほどけてうっすらと残る。
からっぽで綺麗に洗った虫かごを眺める。涙の痕がヒリヒリする。
ママに吐いた言葉が自分に返り。淡い夢の名残を砕いて掻き消す。
誰かが掛けてくれた薄い布団から抜け出て、立ち上がる。
壁掛け時計の針は暗い。
障子越しの月は高く、まだ日は変わっていないのかな。
フラフラとトイレに行く。
縁側の廊下、淡い影がついてくる。
庭の流しそうめんの台を横目にトイレの電気をつける。
驚いたヤモリが壁をはう。
ぼっとん便所にスリッパを落とさぬように用を足す。
起きてから、一歩一歩の動きが鈍い。
お腹が減ってるはずなのに、減ってない。
冷蔵庫のキンキンに冷えた麦茶を飲む。冷蔵庫の灯りが眩しい。
じいちゃん家の冷蔵庫はやたらと冷たい。
明日の朝に出る凍った冷ややっこを確認する。
パパとママの靴がない。こんな時は、いつもより優しいパパとママが現れることを僕は知っている。僕は優しくなれるかな?
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