第6話 転生
クワガタのデカは居なくなっていた。
ママは泣いて僕に謝った。
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手が伸びてくるコウスケではない。
震えて汗ばんだ手と濁った熱い雫に嫌な臭いが混じり、ポタポタ降る。輝く爪から放たれる異臭は生き物とは思えない。
飛んだ、初めて飛んだ、気づけば飛んでいた。
怖い、速い、何かにぶつかった。落ちない、必死に翅を羽ばたかせる、木を探す。見つからない、何も見えない、匂いが頼りだ。めちゃくちゃ疲れる背中におなかが攣りそう、畳んだ脚がだるい、しんどい。
背中にとんでもない衝撃があり、墜落する。何が起きたかもわからない…
しょっぱい水しかない世界。月明かりはゆっくり体に染みてゆき、波潮は辛い。片目が働いてない、月は見えない。脚は自分の意思とは関係なく動いている。ここがコウスケの「うみ」かな……
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月と太陽の光に挟まれた海の波の中に居るが、体がない。
海を泳ぎたい。コウスケは海が好きだった。コウスケ一緒に泳ぎたい。
希望を答える。誰に?分からない。ただ答えた。
コウスケを背中に乗せたい。大きな体が欲しい。
空は飛べなくていい、落ちたくない。
コウスケの手に、また乗りたかったな、これだけは、叶わない。
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海にゆらゆらと、揺れながらそこに居た。
あーだこーだ、と頭の中で考え……てない。
…さみしい…
どうしても最後は同じ言葉が胸に残っては、積もってゆく。
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