02.安達涼風
ぶつぶつぐるぐる、ぶつぶつぐるぐる。
憧れの高比良くんとの電話を終えた安達
「え……高比良く、え? ど……えぇ?」
こんな突然高比良くんから電話がかかってくるなんて……しかも家に来て欲しいって、これ本当に現実……? いくらなんでも都合がよすぎない……?
ネットで調べた恋の駆け引きテクニックが成功したのだろうか、ほとんど返信のない日々に心が折れかけていたが諦めなくて本当によかった。
どうしよう、午後に来て欲しいって言われたけど何時に行けばいいかな……?
宿題の量もわからないので、一時過ぎには着いたほうがいいかもしれない。
「あれ今何時!?」
時刻は既に十一時を過ぎている。こんなことをしている場合ではない。
えっと眉毛と爪と前髪は……多分大丈夫……歯磨きは……もう一回しようかな……。
テキパキと優先度の高い支度をこなしながら、同時に脳内で緊急作戦会議を執り行う。
そうだ、お風呂にも入らないと……!
「ちょっとすず! こんな暑いのに昼間からお風呂入るの!?」
湯船にお湯を張っていると、驚いた母が声を上げた。
「ちょっと汗かきたくて……あっそうだ、お昼は外で食べるから!」
時間もなく喉を通りそうにもないので、お昼ご飯は食べないことにした。
「あらなに、友達?」
「う、うん……家にも行く予定だからさ、お中元のお菓子持ってっていい?」
「別にいいけど……」
「ありがと!」
いつもより素直に感謝を伝えると、着替える服を選ぶために急いで自室に戻った。
やっぱりこれかなー?
選ぶといってもこんな時に着ていけるような服はほとんど持っておらず、本日のコーディネートは消去法により決定した。
肩周りにフリルの施された白いノースリーブのブラウスに、膝丈のデニムスカート。
下着は春休みに母が買ってくれた、一番高くて大人っぽいデザインの物を手に取った。
一応ね……そこまで短くはないけどスカートを履くわけだし……ねえ?
「すずーお風呂沸いたよー!」
リビングからでもよく響く母の声。
「はーい!」
お風呂では短い時間でむくみが取れるよう、半身浴をしながらマッサージをしてみよう。
ムダ毛の処理もしないといけないため、長く浸かっている暇はないのだ。
そういえば……ムダ毛ってどこまで……?
こうして少女が準備を始めてから、一時間が経過した。
「よし、よし、大丈夫、いける、いけてる!」
ストレートアイロンで外巻きにした顎下までのボブに、母に貰ったビューラーで上げたまつ毛、メイクは勉強中なので日焼け止め下地と色付きリップだけ塗ってみた。
「すずー時間大丈夫なのー?」
鏡に指差し確認していると、再びリビングから母の声。
「もう出るー!」
最後の仕上げにボディミストを手首と耳元につけると、ひとまず心以外の準備が完了した。
高比良くんの家は高校の近くにあるらしいので、電車通学の涼風は余裕を持つならそろそろ家を出なければならない時間だ。
アウトレットで友達と買った白いスニーカーを履き、宿題の入ったキャンバスのトートバッグとお菓子の入った紙袋を片手に勢いよく家を飛び出す。
「いってきまーす!」
湿気のないカラッとした晴天、目指すは本丸高比良家、安達涼風十五歳いざ出陣!
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