第14話 今も生きているんだ!ここで死にたくない!
散策に出た雲平は辺りの景色を見ると、古き良きヨーロッパに都合よく現代をミックスしたような街並みで。街灯が電気ではないが存在する。
驚く雲平にキャメラルが、「シェルガイの街はどうだクモヒラ?」と飛びつき、前を歩くアチャンメが、「地球人が来るようになって変わったんだ!」と言う。
話を聞くと、正確には地球人と地球を見てきたシェルガイ人の両方が、シェルガイの都市に上下水や街灯なんかのインフラ整備に力を入れさせたと言うことだった。
「なんかウチの周りとも違うけどいい街だね」
「だろ!」
「じゃあクモヒラはシェルガイに住んじゃえよ!」
雲平は「あはは、ありがとう」と言うと、「でも、ウチでばあちゃんが独りぼっちで俺が帰ってくるのを待っているんだ」と続けると、アチャンメは「ばあちゃん?置いてきたのカ?」と言い、キャメラルは「なんでシェルガイに来たノ?」と怖い顔をする。
正直殺気立ちかけていて、返答次第では雲平でも許さないという気配がある。
「俺は半分巻き込まれたんだよ。セムラさんがゲートを通って俺の住む街に来て、送ろうとしたらゲートに巻き込まれたんだ。ジヤーからだと帰れないから、レーゼに行くんだ」
「事故か!」
「それは帰ってやらなきゃダメだナ!」
「ありがとう。でも来れて良かったよ。綺麗な街も見られたし、皆優しいからね」
「皆!?私もカ!?」
「私だロ!?」
この話で気を良くしたキャメラルは、「クモヒラ〜、今度ばあちゃんと遊びに来いよ〜」と腕にぶら下がるように言い、アチャンメは「じゃあ私はお休み貰ったら地球に行く!」と言って雲平の背に飛び乗る。
この後の散策は、雲平からすれば夢の国に迷い込んだようだった。
軒先に武器が飾られていて、瓶詰めの薬品が並んでいて、皮の鎧なんて物もあった。
正にファンタジー。
映画の世界さながらの景色に心躍った雲平は、「シェルガイは凄いね。これだと地球人が、シェルガイを目指して帰ってこないのも頷けるよ」と言ってしまう。
「そうか?」
「にひひ。ばあちゃん連れて住みたくなったらいつでも言っていいゾ!」
本当にそう思ってしまった。
父や母が自身を捨ててシェルガイに行き戻ってこない。
旅立ちを認めつつも、かのこの相手をしている最中に、父母を疎ましく思ったこともある。
先日のように弱る祖母を見て、父母に戻ってこないつもりか?と憤った事もある。
その雲平が認めてしまうシェルガイの空気。
だがそれはすぐに打ち砕かれた。
「こっちは上物の武器屋だナ!」
「私達は高給取りだから、こっちの店でも余裕ダ!」
そう言って連れられた武器屋は、さっきの露店とは違い、本物の武器屋と言った雰囲気で空気からして客を選ぶ。
店では正装に身を包んだ店員が、マントを着た紳士の相手をしている。
店員は雲平達を見て値踏みをしたのだろう。
金にならないと思ったのか、チラ見で済ませて無視をすると「ニャロ…」「ムカッ」と言ったアチャンメとキャメラルは、金に輝く騎士団章を取り出して「剣を見せろ」「今すぐだ」と言う。
それを見て別の店員が慌てて駆けてきて、「王城騎士団…それも荒熊騎士団!?これはようこそおいでくださいました!」と慌てる。雲平の目にはチラ見で無視をした店員が、慌てているのが見えた。
「この店は、客の見た目で判断するのカ?」
「店員なら、客に剣をすぐ見せロ」
圧を放つ2人に怯えながら剣を見せに来る店員に、アチャンメがため息をついて「カオスチタン製の剣は?」と詰める。
店員は困り顔で慌てながら、「い…今は在庫がありません!?戦争に備えて全て買い占められました!今一番上等なのは、このヘブンチタニウムのショートソードになります!」と言った。
「んだよ、それで偉そうにしてたのかよ。アァン?」
「折角クモヒラにプレゼントしようとしたのによ。しゃーねーからそれ買ってやるから、今すぐ鞘と一緒に揃えろヨォ!」
恫喝に近い2人の圧に店員は半ベソで駆けていくと、マントの紳士の背後にいた男が「雲平?日本名?」と呟き、雲平を見て顔色を変えると「日本人!日本人だな!助けてくれ!俺は
国府台帝王の顔立ちは悪くない。
ビジュアル系バンドにも居そうだし、モテるタイプのガテン系。ノースリーブシャツを着て肉体労働をしても、スーツを身に纏ってバリバリ仕事をするのも似合う。そんな顔立ちだったが、顔には細かな傷がついていて耳や鼻には大きな傷が残っている。
すぐにマントの紳士が「黙れ奴隷」と言って手をひくと、国府台と名乗った男の首輪に繋がった鎖が国府台を床に引きずり倒す。そしてそのままマントの紳士が蹴り上げた。
口から血を流す国府台は「すみません」と謝ったが、すぐに身体を起こして雲平の方を向くと、「身請け代を実家に言ってくれ!頼む!俺は生きてる!今も生きているんだ!ここで死にたくない!」と続ける。
再度引き寄せられて蹴られると、鼻血を流しながら「ず…ずびばぜん」と国府台帝王は泣いて謝っていた。
マントの紳士は「こううるさくては買い物もできない。また来よう」と言って店を後にした。
店員は忌々しそうに雲平達を睨むが、雲平の相手をしていた店員は上等な剣が売れて嬉しさでニコニコと接客をして見送ってきた。
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