第4話 何この修羅場。
雲平はゴブリンを倒したその場を離れると、墓場の管理人にアナザーゲートが生まれた事を伝える。
管理人は目を丸くしたが、雲平に「まだ魔物がいるかも知れないから、お墓を封鎖して逃げたほうがいいですよ」と提案されると、管理人は交番に行きながら避難すると言った。
なんとなく、管理人の頼りなさを見てしまうと、セムラを任せる気にはならなかった。
「仕方ない、帰りに少し遠回りになるが警察まで送り届けるか…」
漏れた呟きにセムラが「すみません雲平さん」と謝るが、「いいですって」と返して歩き出す。
セムラは足を捻っていたが、時間経過で歩行程度なら問題がなくなっていた。
だがすぐに別の問題に見舞われた。
春先特有の夕方の寒さにセムラは身震いしていて、雲平が「寒い?」と聞くとセムラは頷く。
上着を貸して「こっちとシェルガイは違うんですかね?」と聞くと、セムラが居たのは温暖な地域で、他の地域は今くらい寒い場所や雪深い地域もあるということだった。
困った雲平はセムラをざっと見ると、スマホを取り出してメッセージアプリを起動する。
そしてメッセージを送るとすぐに既読と返信が来たので、ある事を頼んだ。
雲平は家まで帰る事を諦めてかのこの所に向かう事にした。
玄関を開けて「ばあちゃんただいま」と言うと、少し嬉しそうで意外そうなかのこは「あら?雲ちゃん?お墓の帰りに寄るなんて珍しい」と言いながら玄関までヨタヨタと来ると、セムラを見て「あら?お墓に行ったのに、可愛らしいお嬢さんを連れてどうしたの?」と言う。
「とりあえず色々あってさ、あんこは?」
「あんこちゃん?」
あんこと言うのは先ほどのメッセージアプリの相手。
そしてかのこの反応で察した雲平は、「中で説明するから上がるね。セムラさん、ここでは靴を脱いで。段差は歩ける?」と聞くと、セムラは「腰をかけても良いですか?」と聞き返してきて、頷くと革靴を脱いで上がった。
「あらあら、可愛らしいお嬢さんだこと。怪我をしてるの?お薬箱を出しますから待っててね」
かのこはニコニコと薬箱を出しながら、「雲ちゃんがあんこちゃん以外の女の子を連れてくるなんてね。お婆ちゃん嬉しい。長生きするものね」なんて話したが、ニコニコ顔はここまでだった。
前もってセムラには、「うちのばあちゃんの家に寄るから着いてきて、そこで寒さに備えて、警察を呼びましょう」と言った後で、「ただ、うちのばあちゃんはシェルガイが苦手なんだ。だから嫌な目に遭うかも」と言い、セムラも首を横に振って「いえ、仕方のないことです。シェルガイは魔物を運びます。聞けば地球は魔物のいない世界。それは嫌にもなります」と答えていた。
とは言え、セムラが突如墓に現れたアナザーゲートから出てきたシェルガイ人だとわかると、かのこは豹変して「あなた何!?私から金太郎だけでなくて、雲ちゃんまで連れて行くの!?」と言った。
豹変具合に驚くセムラが、「お婆様…」と呟く中、雲平が「ばあちゃん、違うよ。怪我をしたら助けるのが人の道だよ。困った人を見捨てるの?」と言って制止したが、かのこは「雲ちゃん!お黙りなさい!」と怒鳴りつける。
一瞬で10は若返ったように怒鳴り、話を聞かないかのこに雲平は辟易したが、そこに「こんばんは〜、雲平〜、来たよ〜」と声が聞こえてくる。
雲平は「助かった」と呟くと、玄関に向かって「あんこ!入って!」と呼ぶ。
声の主は勝手知っていて、「はいはい〜。お邪魔しまーす」と言いながら入ってきて、「何?お婆ちゃん怒らせたの?お婆ちゃん風邪なんでしょ?お婆ちゃん!雲平より可愛いあんこだよ〜」と言いながら居間に登場すると、状況を見て「何この修羅場」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます