【4月号】:有栖川魔法学園公式新聞
【4月号】:有栖川魔法学園公式新聞
◇波乱の幕開け! 一般基礎学科クラスの快進撃!
第二学年へと進級し、初めて挑む魔法対抗戦。
例年になく粒揃いと評判の彼らの試合は、蓋を開けてみれば事前に集めていた前評判を見事に覆す大波乱が待ち受けていた。
近接戦に特化した生徒が集まる体育学科クラスに対し、一般基礎学科クラスがまさかの勝利を収めたのだ。
総合戦力はやや体育学科クラスの方が上。
前評判ではそのように評価され、実際に勝敗についてアンケートを取ったところ七割近くが体育学科クラスの勝利を予想していた。
またその大きな理由として、二名の生徒の名が挙がっていた。
【狂犬】の二つ名を冠する佐倉朱音さんと、ナンバー2と称される山﨑和也さんである。
最強の一角と目される【狂犬】佐倉朱音さんは元より、ナンバー2と呼ばれる山崎和也さんもまた頭一つ抜けた戦闘力を有している。
一般基礎学科クラスにおいて彼女らと互角に渡り合えるのは【魔法使い】西園寺優介さんのみと目されていたこと、また主戦場が二つ存在することから一般基礎学科クラスの敗北は必然であるかと思われた。
しかし、試合展開は予期せぬ方向へと流れる。
ダークホース――一般基礎学科クラス、山田麗華の存在だ。
去年を知る人ほど、その光景に驚いたことだろう。
あの魔法を不得手としていた彼女が、山崎和也さんを相手にまさかの大金星をあげる。
さらにはその手で見事にクラスの勝利を決めるなど、その活躍は誰から見ても見事なものであった。
またその他にも随所で輝きを見せた【魔弾】スメラギ・アリスさんや、単騎で体育学科クラスの猛者を相手に最後まで生き残った東間翔也さんなども印象的だ。
有識者からは『良し悪しを問わず、一般基礎学科クラスらしからぬ個性の色が見える』と評されていた。
一方、もう一つの対抗戦も苛烈を極めた。
一般応用学科クラスVS魔法学科クラス。
総合力に秀でた一般応用学科クラスに対し、魔法行使に特化した魔法学科クラスはやや強引ながらも終始試合展開を有利に進めていた。
注目されていた【一星】天神泰斗と【魔女】カルナ・メルティの頂上決戦は残念ながら叶わなかったものの、二つの戦場でそれぞれ二人ともが戦場の流れを大きくコントロールし、その存在感を大いに見せつけていた。
だがそんな一進一退の状況に変化をもたらした女子生徒がいた。
才女――
その類まれなる洞察力は今年も健在。
二つの戦場を観察することにより魔法学科クラスの『子』を特定。
回答違いによる敗北のリスクを負いながらも審判に連絡し、その結果一般応用学科クラスに勝利をもたらすこととなった。
智力と胆力を兼ね備える彼女こそ、今年の一般応用学科クラスを牽引する代表生徒の一人である。
なお生徒投票による4月度魔法対抗戦におけるMVP候補者は以下の四名の生徒が選出された。
・一般基礎学科クラス:山田麗華(主な選出理由:歴然たる成長)
・体育学科クラス:山崎和也(主な選出理由:有する戦闘力)
・一般応用学科クラス:神崎都子(主な選出理由:優れた戦術眼)
・魔法学科クラス:平田一郎(主な選出理由:緻密な魔法コントロール)
なお注目のMVP選出は、その票が見事に別れたため学園側での協議にまで発展することとなる。
珍しい出来事に注目が集まる中、なんと今回のMVPには山田麗華さん、そして神崎都子さんの二名が選ばれることとなった。
ひと月に二名のMVPが選出されることは稀であるが、両者ともに一年生の期待に見事に応えてくれたその活躍に対して、学園側は誠実に彼女たちを評価した結果だ。
またMVPに選ばれたことにより、二名には金の指輪と以下の【二つ名】が与えられた。
・山田麗華:【
・神崎都子:【
■総評
有志以来の傑物揃いと評判に高い新二年生たちの開幕戦は、見事に期待を超える展開を見せた。
またその魔法対抗戦では魔法の研鑽を形と成す生徒が着実に成果を披露し、結果として二名ものMVPを選出した。
これもまた記録に残すべき素晴らしい成果の一つであると言えるだろう。
有栖川魔法学園新聞部は今後も彼らの益々の活躍に期待したい。
◇熱愛発覚!? 熱々デートの【魔法使い】と【狂犬】に密着取材!!
時間を経てなお、いまだ四月度魔法対抗戦の話題が尽きることはない。
そんな中で、我々はただならぬ関係性を感じさせるとある出来事を目撃した。
魔法対抗戦という戦場において、まるでデートのような雰囲気を醸し出す【魔法使い】西園寺優介さん(16)と【狂犬】佐倉朱音さん(16)の二人だ。
当時の中継カメラではほぼ全ての時間において一つの戦場を移し続けていたものの、もう一方の戦場では確かに彼ら二人は熱々な時間を過ごしていた。
その証拠が以下の画像である。
(⇨大の字で寝転がる西園寺優介と佐倉朱音の画像)
我々はこの画像を入手すると同時に当事者たちへとインタビューを試みた。
******
■佐倉朱音さん
――すみません、有栖川魔法学園新聞部の××(伏字)と申します。当時の状況についてお伺いできますか?
「ふふっ、すみません。彼とのあの時間は秘密と決めておりまして」
――ちなみにこんな画像を入手しているのですが、何かコメントはございますか?
「どれでしょう。……あらあら、よく撮れてますね。ちなみにこれ画像データなんか」
――もちろん取材にご協力いただければ差し上げますよ
「そうですか。それでは私が話せるところだけ」
(画像をポケットにしまう佐倉朱音さん)
――早速ですが、率直に申し上げまして我々は佐倉さんと西園寺さんがただならぬ関係性にあるのではないかと疑っております。その辺りはいかがでしょうか
「ただの友人というのは寂しいですね。ただ恋人や愛人とまではいきません。――それをどう捉えるかはお任せいたします」
――なるほど。一言で表すのが難しい関係だと?
「関係性は言語化出来るものだけではないですから」
――そうかもしれませんね。それでは最後に件の西園寺優介さんへ何かコメントなどいただけますでしょうか
「優介くんにですか? そうですね、それではまたデートしましょうとお伝えください。次はもっと素敵なお菓子をご用意いたしますね」
――……つまりそれはデートをした事があると、そういう事でしょうか? あ、佐倉さん? 最後に、最後に一言ご回答を……!
******
■西園寺優介さん
――すみません、有栖川魔法学園新聞部の××(伏字)と申します。当時の状況についてお伺いできますか?
「え、それ今じゃなきゃダメです? いま絶賛取り込み中なんですけど。――あ、いや××さん(伏字)違うんですってば」
――ちなみにこんな画像を入手しているのですが、何かコメントはございますか?
「えー、少しは帰る姿勢を見せても……あ、あーなんてものを。……え、いや何でもないんです××さん(伏字)。あ、いやーそれは見ないほうがいいかなーと。……え? いや、やましいものではなく――あ、あー」
――もちろん取材にご協力いただければ差し上げますよ
「この状況で誰に聞いてます? 全然欲しくありませんけど。ほら、とか言ってる間に画像が細切れに」
――早速ですが、率直に申し上げまして我々は佐倉さんと西園寺さんがただならぬ関係性にあるのではないかと疑っております。その辺りはいかがでしょうか
「なんで燃料を投げますかね? てかもう分かっててやってますよね!? いや本当に勘弁して下さいって。……あ、何かコメント? この状況で!? うわっ! ちょ、あっぶなっ!?」
――なるほど。一言で表すのが難しい関係だと?
「何も言ってねぇぇぇ!! ちょ××さん!!(伏字) ちがっ……本当に違うんですって!?」
――そうかもしれませんね。それでは最後に件の佐倉朱音さんへ何かコメントなどいただけますでしょうか
「会話が成り立たたねぇぇぇ!! なに? 朱音さん? お願いだから誤解を解くのを手伝ってくれないかな!?」
――つまりそれはデートをした事があると、そういう事でしょうか?
「えー。……あっ――」
(爆発音と共にレーコーダーの録音が途切れる)
******
残念ながら当事者の口は固く事実を聞き出すことは出来なかった。しかし決して諦める事なく、引き続き真実を突き止めてみせることをここに誓う。
有栖川魔法学園新聞部は引き続き彼らの関係性を追っていきたい。
◇先取り! 第二学年生の五月行事予定!
■第一学年生とのパートナー制度開始
五月より第一学年生とのパートナー制度が開始されます。
詳細については事前に説明会で連絡しておりますが、あらためて担当教師からの開始連絡をお待ちください。
■五月度定期試験
五月に開催される定期試験の内容は『オリエンテーション』です。
この試験は第一学年生および第二学年生による合同試験を予定しております。
詳細については後日連絡いたします。
■その他
・三月に破損した第一体育館ですが予定通り修理工事が四月末で完了見込みです。
それまでは引き続き第二体育館のみを利用して下さい。
・四月中旬に実施された定期魔力診断の結果が届いております。
まだ受け取っていない生徒は速やかに担当教師へ申し出て下さい。
以上です。
◇掲示板
・今月も落とし物が届いております。心当たりのある方は事務員にお尋ねください。
※4月の落とし物:眼鏡、扇子、ペンケース、ほか
・図書館館長からのお知らせですが、要望のあった新書を取り揃えました。興味がある方は図書館までお越しください。
******
※今月の『突撃料理研究会!』コーナーも取材班の体調不良につきお休みとさせていただきます。
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