ユウカ 編 第一

「それでは、現在の状況を確認しましょう。イズミ記者、現在の状況についてお伝えしてください。」


「はい、現在もコウベ市ニシナダ区を中心に規制線が張られており、民間人の立ち入りができない状況です。先ほど、1時間前ぐらいに自衛隊や救急隊員の方々が、規制線を越えて、現地へと向かう様子が確認でき、要救助者の救助に向かわれると思われます。」


「わかりました。生存者は、確認できていますか?」


「え~はい、まだ確認できておりませんが、現在でも、救急車を中心に緊急車両の往来が続いており、周辺には大型の救急車が常駐しており、救助された方の懸命な救命活動が行われておりますが、未だに被害の全容がつかめていない状況です。消防関係者の話によりますと、至る所に人が倒れている状況で、全ての人を救助するには、相当な時間がかかるのではないとおしゃっており、未曾有の事態が起こっていると思われます。現場からは以上です。」


「わかりました。決して無理をせずに安全に取材を行ってください。」


「現在、お伝えしている通り、今日14時頃、兵庫県コウベ市ニシナダ区を中心に多数の人が倒れているのを複数の住民が発見し、現在、多数の人が意識不明の重体になっている模様です。この事態を受けて……」


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 私は、真っ白な天井を見て目を覚ました。そして、私の周りをたくさんの人が囲んでいた。


「先生、目を覚ました!!」


 私は目が点になった。あたりを見渡すためにゆっくりと起き上がろうとすると、周りの人がなだめるように私を寝かそうとする。

 人の周囲を確認にすると、様々な機械類が置いていることが分かる。そして、身体中にはパットと点滴がいくつもつけられている。


「先生、こちらに」


マスクを着けた先生と呼ばれる人が私の前にやってきた。


「私の事が分かりますか?」


「ええ、ハイ…」


「では、貴方のお名前をわかりますか?」


「とっ、あっ、ナカタ ユウカです。」


「良かったです。一先ずは、大丈夫そうですね。検査は一通り行っているので、心臓も正常に動いていますし、お腹の子も問題ありません。一旦、様子見で専用の病室に移動するので……」


 先生と呼ばれる人がそういうと周りの人がせかせか動き出した。

 私はまたこの状況を理解できなかったが、少しずつ、ここが病院だとわかった。しかし、出産予定日まではだいぶ先の話で、今朝起きたとき、体調が悪かったわけではない。今の状況に疑問しかなかった。


「あ~の……」


「大丈夫ですか? どこか具合がおかしいのですか?」


私の声に気付いた看護師が心配そうな顔をして、私のそばに近づく。


「なんでわたし、ここにいるのでしょうか?」


看護師は私にわかるぐらいの戸惑いを見せた。


「今日の出来事は思い出せますか?」


「7時頃に起きて、夫と朝食を取って、それから…」


「シライシさん、今、手が空いているなら、手伝ってくれる?」


「ええ、分かりました。ごめんなさい、少し外しますね。すぐに戻ります。」


 そういうと看護師は足早にどこに行っていました。


 私は、今日の出来事を思い出そうとした。でも、あまりはっきりと思い出せない。思い出そうとしても朝の出来事しか思い出せない。頭の中にあるモヤが晴れないまま、私はいつの間にか眠りについていた。


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