第9話 彼女が推しすぎて一瞬も見逃したくない女

 日曜日の午後。

 二人は街へ出て映画を観ることにした。


「ねぇ、愛加?どの映画を観るか決まっているの?」

「ううん。着いて時間がちょうど良い物を前知識なしで観るのが好きなんだぁ。」

「うふふ、かわいい。冒険の旅なんだね?♡」

「でも二人で行くから、ジャンルで決めてもいいよ?華恋はやっぱり恋愛映画とか?」

「ううん。私と愛加より甘い映画なんてきっとこの世にないもの。そんなのつまらないでしょう?」

「え、振り切ってないほどよさが面白いかも知れないよ?」

「そうね。え?でもどうせ私はつい愛加の顔ばかり見てしまうもの。」

「え、映画観てよ。終わったら感想言い合おうよ?」

「はぁぅっ!♡そんなに、、私のこと知り尽くそうとしてくれるの?♡」

「いや、せっかくだから映画を知ろうよ。。」

「うん。わかった。初めての共同記憶みたいなものね?分かち合う私たちって考えたらそれも素敵。」

「うん。(それでもういいから。)さ、着いたからチケット買ってくるね?」


 数分後、王道のコーラとポップコーンを買った二人は、開演時間のちょうど良かった王道のラブコメ映画を観ることにした。


 指定されたシートに座ると、二人は開演時間までポップコーンを頬張る。


「ふふっ、愛加ってポップコーン似合う♡リスみたい♡」

「ねぇ、ずっとこっち見てないで、映画が始まったら前を向いてね?」

「はぁい。でも、今そんなに可愛い愛加を一瞬でも見逃したくないな。」

「はは。嬉しいけど、明日も同じ顔だから。笑」

「いいえ。微妙に違うはずです。だって、今日のお化粧はお休み仕様だし、髪型だって服だって休日モードだし。この瞬間の愛加がどれほど微妙にいつもと違った可愛いなのかを知っているのは私だけなの。」

「あ、はい。そうですか。。」


(相変わらず、ちょっと甘過ぎるんだよなぁ。。まぁ、いいけど。)



「あのね?ご飯食べてるときの可愛い愛加でしょ?寝起きの愛加。寝る前の眠い愛加。あと、、エッチの時の愛加♡これは攻めてるときと攻められているときで本当に全く違う顔で・・・」

「あ、ねぇ、始まるよ?映画。」(シャラップ)

「あんっ!♡ポップコーン、口に突っ込むのやめて♡わんぱく感がきゅんすぎる!」

「静かにしてくださいね?」(手を握りしめる)

「あ、手っ!♡」

「うん♡静かにちゃんと映画観て?」

「は、はい!♡」


 この後、華恋は意外と大人なので静かに映画を観てくれた。ただし、時折華恋の手が愛加の太ももの間に伸びてくるので、愛加はずっと華恋の手を掴んでいた。


 映画が終わると、華恋は安定に怒られた。


「華恋?映画館でエッチするのは漫画の中だからだよ?現実でしようとしちゃダメ。」

「そうなのかなぁ。あの暗さでとなりに愛加がいるって思ったら、私は計り得ぬ興奮を覚えたんだけど、。」

「怒られたらなんて言うの?」

「ごめんなさい。あ、今ので私ちょっと、、ブルッ。。」

「え、何感じてんの?」

「怒った愛加がかっこ良すぎて。。」

「もう、、なにもかもご褒美になっちゃうんだから、、(げんなり)」

「だって、、大好きなんだもん。」



「今のはかわいかったから許す。」


「え!チョロい!好きっ!♡」




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