第18話 新築校舎と


 満腹とまではいかないものの、腹ごしらえを終えた3人は次なる目標地点へと向かう。


「次いくとこは……がっこー?」

「珍し。そのとーり」

「ジェル今珍しって言った? なんのこと?」

「ううん、言ってない」

「うそつけ」

「ごめーんね」


 学校と家の往復以外の道のりは、ほとんどが細部までの把握をしきれていない。

 今回通ってきたルートは例外であって、いくら地理もかなりの勉強をしていたとはいえそんな細部までは覚えられない。


 そして、学校に向かえばその存続の確認……運が良ければ今通っている生徒から何かしらの情報を聞き出せるかもしれない。

 両親や集落のことだって、もしかしたら誰かひとりくらいは知っているかも。


 そんな淡い期待を胸に、人気のない道でこそこそと足を進めること約三十分。


「わぁ……」


 それを見たとたん、思わず声がもれた。


 完全に健在で真新しい建物がそこにはあった。

 以前までのやや古いザ・木造建築から姿を変えて。


「ジェル、これなに? 学校なくなった?」

「んー……断定はできないけど学校だと思うよ」

「うっそだー」

「断定はできないって言ってるでしょーが。望美さん……望美ちゃんはどう思う?」


 こういった場面ではラビジェルと話すより他の誰かと話す方が話が進む。

 イコールラビジェルとの会話で話は進まない。


「え……? どこからどう見ても学校じゃないの?」


 彼女の口から発せられた言葉は、エンジェルが思い描いたのと全く同じだった。


「望美、頭だいじょーぶ? 学校はこんな綺麗なもんじゃないぞ」

「えぇっと、ここの普通の学校が分からないんだけど、光ノ星ではこんな学校が普通よ」

「え!? じゃあ化物界は乗っ取られちゃったの!?」


 すっとんきょうな叫び声をあげた妹に「割り込むな」と冷ややかな視線で圧をかける。


 今状況整理をしているはずはのに、余計に話がこんがらがってしまうではないか。


「光ノ星が関与してるかもってこと?」

「多分。でも私が今まで行ったことがある星も全部似たりよったりな造りよ。多少の違いはあってもそこまで気にならない程度だし」

「じゃあ……他のどこかの影響とか?」

「可能性は十分にある。……というか、こんな風じゃない学校ってどんな学校よ」


 玄武の石像があったりね。

 泥砂埃が校舎をえげつないほど汚していたりね。

 チャイムが手動だったりね。

 机が何十年使っとんじゃ、ってくらいボロかったり。


 なんて、外の学校の本も読んだことがあるのにそこまで気にしてなかった事実は、恥ずかしくて言えない。


 だからあえてそこは隠して。


「グラウンドが戦闘訓練の場所になってたり、もっと年期のある小さい建物だったの。1階建てで広面積」

「なるほど……アプデしたとか?」

「あぷで、?」

「アップデート。新しくしたって意味で言おうとした」

「なるほど。でも戦時下に置かれてたはずなのにどうしてだろう?」


 鉄でできた高い校門の前でたむろしていると、ザっザっという足音と共にご高齢の方特有の声がかかってきた。


「その疑問の答えなら、わしに着いてこれば全部わかるわい」


 やけに洒落た白いタキシードで身を包んだ玄武げんむが、加齢臭を漂わせながら近寄ってくるのであった。




∴*∴あとがき∴*∴β

誤字、脱字他もろもろを伝えるためのノート作りました!何かあればそちらにお願いします。

一応自分でも数回見返しておりますが、修正が遅れていたりで直っていないところがあります。

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