第16話 るぅの過去と冷たい床
神様は本当に意地悪だ。
物心つく前から、ぼくは男だと信じて疑わなかった。
だって、プリキュアより仮面ライダーが好きだし、ぬいぐるみより恐竜のフィギュアが好き。
おままごとより仮面ライダーごっこの方が好き。
一人称は「私」じゃ違和感があって、いつの間にか「ぼく」になっていた。
「お前、変なやつ。」
初めて言われたのが幼稚園の年長組の頃だった。
変なやつ?誰が?
と、初めはよく分からなかったが何回も、何回も言われるから、自分が変だということを自覚した。
どうして同じクラスの男の子は仮面ライダーが好きでも変じゃないのにどうしてぼくが仮面ライダーが好きって言えば変と言われるのだろうか。
仮面ライダー、恐竜のフィギュアは全部【男の子】の為にある。
ぼくは変だ。
「るぅはるぅだろ?どこが変なんだよ。」
変だと言われ続けた僕ぼくに暖かい手を差し伸べてくれたのは、
紛れもないヒカ君だった。
その言葉に救われた。
ぼくは変じゃないって認めてくれた。
ぼくはぼくで居れた。
嬉しかったよ。
でも、ゲームに誘ってくれている男の子達は家でいつもぼくをいじめた。
でも、周りに助けてくれる人なんていなかったし、何度も何度もヒカ君に相談しようか迷っけど、天ちゃんを困らせたくなくて相談はしなかった。いや、出来なかった。
中学校に入って、天ちゃんはいなくなった。
小学生で痛い目を見たぼくはそれなりに学習して、「女の子らしく」することにした。
吐きそうな毎日だった。
自分を隠すのはこんなにも辛いことなのかと、痛感した。
したくも無いことをして、対して好きでもない人と
「楽しいね。」
って笑いあって、いつの間にか自分が分からなくなって。
暗闇の意識の中で最後に思い出したのは、ヒカ君の暖かい手だった。
…そうだ。
ヒカ君と同じ高校に行こう。
行けなかったらもう、
死ぬしかない。
こんな世界生きていけないから。
親の情報でヒカ君の第1志望を聞きだした。
それからは必死で勉強して、絶対に合格する筋道を立てていく。
合格欄にぼくの番号があった時は、嬉しい。よりも安堵の気持ちの方が大きかった。
入学式はヒカ君の姿を見て泣き出しそうになった。
これでまたヒカ君は僕を救ってくれるって。
そう思っていた。
でもヒカ君が、笑いかけるのは今までずっと耐えてきたぼくじゃなくて、知らない奴だった。
頭が殴られたような感覚だった。
_______________
「なんでお前なんかが…ヒカ君に救って貰えるの…ずるいよ…」
今までみんなの前で取り繕って隠してきた孤木さんの暗い所を吐き出すようにその言葉を零した。
孤木さんはずっと一人ぼっちだったんだ。
誰にも認められず、誰にも君のままでいいって言われず。
多分、私の今までの事を言ったとしても孤木さんには納得して貰えない。
私は強く、下唇を噛んだ。
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