第5話 幼なじみの再開と思い出
自分の背中をつっつかれ、振り向くと、どっかで見たことあるように感じていた1年生がいた。俺のことを「ヒカ君」なんて呼ぶやつなんか1人しかいない。
「まさか…るぅ!?」
「そーだよー!」
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『おばさん、るぅまた風邪ー?』
『そうなのよ。せっかくだからお見舞いしてあげてくれない?』
『うん!』
るぅとは、家が隣でいわゆる〈幼馴染〉と言うやつだった。
よく体調を崩して小学校を休んだ
るぅにプリントを届けるのが俺の役目。周りから見たら面倒ごとを押し付けられているように見えるが、俺はそれが嫌じゃなかった。
『るぅー。プリントと、給食のプリン持ってきてやったぞー。』
るぅの家の階段を駆け上がり、
〈るぅ〉とかかれたプレートがぶら下がっているドアを勢いよく開けた。
『ヒカ君…あ、ありがとう…』
るぅはショートカットで、よく男の子といっしょに遊んで、リボンより恐竜のフィギュアが好きで、みんなからみたらまるで男の子みたい。
だけど、風邪の時のるぅは弱々しくて、ちょっと涙目で、いつものるぅの面影はない。
そんないつもと違うるぅがとてもかわいく思えて、そんな姿に見惚れていた。
『もーちゃんと治せよ。みんな心配してたぞー』
るぅはみんなの人気者。
いや、男子の人気者だ。
ゲームが上手くて、ノリも良くて面白い。
でも、風邪の時のるぅを知っているのは俺だけ。
その事実に俺はとても特別感を感じていた。
『大丈夫だよ!るぅ強いもん!』
自分自身が1番辛いはず。でも、
俺に心配をかけないように無理やり俺に、にっと笑ってくれた。
そんなるぅに俺は恋をしていた。…ような気がする。
るぅはそのまま中学に上がると同時に親の転勤のため、結局俺はるぅに想いを伝えずに離れてしまった。
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「ひ、久しぶり!なんていうか…か…」
いやいやいや!俺いまるぅになんて言おうとした!?〈可愛くなったな〉なんて言ったら100%キモがられるだろ!
「変わってないな、るぅ。」
あっぶねー。いい感じに誤魔化すことができた。
でも変わってないのは本当だ。
髪型も昔と同じ…いや、髪色が茶髪に染まってるな…まぁうちの高校髪色とか自由だしな。
それに雰囲気だって昔の元気な感じとおんなじだ。
「ヒカ君だって、昔と全く変わってないよ!」
照れながらニコッとまるでつぼみの花が開くように笑う彼女を見てあの時、るぅが風邪をひいた時、俺に笑いかけてくれた笑顔を思い出して、元気をもらえた気がした。
「はーい。自己紹介も終わっただろうから、天文学部の一年の行事について説明していきます…」
少し猫背の澄川先生が白いチョークを手に取り、説明し始めた。
「まず初めは7月の班での活動【学校で泊まり込み天体観測】だ。夏休みの夕方学校に集まり、泊まり込みで星を観察する。
次は9月、部員全員での活動、
【天文学、山の合宿天体観測】だ。これはお前らのサバイバル能力が問われる。まぁ、頑張ってくれ。
次、12月には夏とは違って班関係なく【冬の泊まり込み天体観測合宿】だ。これはさっきも言ったとうり、班関係なく好きにグループを組め。まぁ、天体観測兼3年生の思い出作りみたいなものだ。
あと、夏の一泊2日の予定ではなく、まるっと5日間泊まり込む。
これがざっと1年の天文学部の行事だ。質問はあるか。」
濃い!濃すぎるよ!天体観測部のイベント!
やーでも…めっちゃ楽しみっ!
隣の凪は頬杖をつきながら何か考え事をしているように見えた。
本当にこいつ話聞いてたのか?
まぁいいや。
質問は澄川先生がしっかり説明してくれたためみんな手を上げなかった。
「これで天文学部、部員顔合わせ兼、今後の行事についての説明会を終わる。解散。」
1年生の期待と不安が渦巻く会は澄川先生の一言であっさり終わった。
俺は教室に帰ろうと凪に声をかけようとした。
その時、
「ねぇ、黒瀬…さん?だよね。
ぼくは1年3組の孤木るぅって言うんだけどさ、同学年としてこれからよろしくね!」
るぅが凪に話しかけていた。
まぁ、るぅのことだ。凪とも秒で打ち解けるだろう。
「は、はぁ…よろしく…孤木さん。」
な…なにー!?
あの、コミュ力おばけのるぅさえもあいつと打ち解けられないだとー!?
稲妻に打たれたかの衝撃がはしる。
そりゃ俺は嫌われるわ…
もう1人で教室もどろ…
「…待って佐倉。孤木…さん?が凄い話しかけてくるんだけど…どうしたらいい…?お前、幼馴染でしょ。」
真っ青な顔の凪が俺の理科室の扉のドアノブへ伸ばした手を掴んだ。
「どうしたらいいって…あーじゃあ先教室もどってろ。」
俺がそう言うと同時に上靴をパタパタと廊下に響かせ、走っていった。
よっぽどるぅみたいな陽キャタイプが苦手だったんだろう。
はぁ…とため息をついて軽くるぅをこついた。
「るぅー凪いじめちゃダメだろー…」
「いじめてないしーっ!あの子、ヒカ君のお友達?大切にしなよー。天ちゃん友達少なi…」
「余計なお世話だっ!」
「まぁまぁ…そういやさ、7月の天体観測すっごく楽しみだよねぇー」
確かに、初めてのイベント…
楽しみすぎるっ!
でも、学校に泊まり込み、初めての体験だ。
楽しみとは別に俺の心に不安が芽生える。
「ああ…まぁ楽しみだな!」
るぅにこんなことで不安がってるなんて思われたらカッコ悪い…
「もしかして〜?初めての経験だから不安〜なんて思っちゃってる?」
「なっっ…!」
全部お見通しだってことか…。
「大丈夫だよ、そんなに不安にならなくても…だって!ぼくの班1年ぼくだけだよ?もう不安しかないよねぇー」
あははと軽く笑った彼女の目はとても不安で満ちていた。
そうだよな。みんな初めてだから不安じゃない人なんていない。
大丈夫だ。
「ありがとう、るぅ。」
「なんのことかな?」
るぅが同じ部でよかった。
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