第5話
桜に引きずられる形で結衣のいる訓練場へとやってきた僕。
「ぬるい!もっと真剣にやれッ!君たちの頑張りが人類の未来に直結する!ここで踏ん張れなければ人類は滅び、ここで踏ん張れば人類は希望を得るッ!」
そこでは結衣の上げる大きな声が響き渡っていた。
「……真面目だなぁー」
檄を飛ばしながら神祇官候補の子供たちを鍛えている結衣をぼーっと見ながら僕はあくびを噛み殺す。
「結衣さんやっぱりカッコいい……ッ!私もいつかは結衣さんみたいな神祇官に……ッ!」
昔、結衣に助けられた経験から彼女に憧れを抱いている桜が感激の声を上げる。
「……ッ!?ぜ、柴旅!?」
僕と桜が共に結衣の方へと視線を送っていたところ、それに気づいた結衣がこちらの方に視線を送り、驚愕の声を上げる。
「んっ」
僕は結衣の方へと自身の手を向けて挨拶し、彼女の元へと移動。
神聖術で強化される僕の瞬発力はレべチ……一瞬で移動が完了する。
「な、なんでここに……?」
「桜に連れてこられて……」
「な、なるほど」
「こんにちは!結衣さん!」
「えぇ。こんにちは」
僕に遅れる形で近づいてきた桜の挨拶に結衣も挨拶を返す。
「柴旅がこんなところにやってくるなんて……」
「本意ではなかった。後、子供たちを前にしてこんなところってのは辞めた方が良いと思う。後、置き去りにされているよ?あの子たち」
「あっ、ごめんなさい」
僕の言葉を聞き、結衣が子供たちの方へと視線を向けて謝罪の言葉を口にする。
「せっかく来たし……このまま何もしないと桜が起こるだろうから僕も子供たちのめッ!?」
不穏な気配を察知した僕は言葉を途中で止め、神聖術を発動。
この場にいる全員を守るように結界を張る。
「任せて」
「任せた」
僕の張った結界に放出系の神聖術が衝突したタイミングで僕は一言告げ、結衣が僕の言葉に頷く。
「なっ!?何!?」
桜が動揺と恐怖のまじった叫び声をあげ、子供たちに動揺が広がる中。
僕の結界から結衣が飛び出してこちらに神聖術を向けてきた下手人を追いに行く……あっ、みんなを宥める役は僕に任せるつもりなのね?
「落ち着いて良いよ」
僕は神聖術で銃を作り出し、それを上空へと掲げて発砲することで周りの注意を自分へと向けさせてから口を開く。
「何があろうとも僕が必ず守るから」
ほんのわずかに自身の声へと神聖力を混ぜ、力強さをプラスした僕は彼らを安心あせるように頷いた。
「まぁ、次の攻撃が来るよりも前に結衣が問題を解決するだろうけどね?」
結衣は神祇官の中でも上澄みの上澄み。
こんなちんけなことを行う犯罪者程度には負けないであろう。
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