第1話
アスファルト舗装され、整えられた道にコンクリートで作られた建物が並ぶ日ノ本中央政府。
「ただいま」
僕が特例として貸してもらっている神祇官用の高層ビルの一室へと数か月ぶりに入る。
ちなみに建物の階層は結構上の方で、お隣さんは結衣である。
「きれいになって」
数か月開けていたせいで溜まっていた埃を神聖術でさっさと掃除した僕はリュックを床へと投げ捨て、ベッドの方へと体を倒す。
「お片付けよろしく」
僕が寝っ転がったベッド……そこに置いていた少し大きめのぬいぐるみたちへと神聖術で人工的に知能を与えて動かす。
感情とかは僕もよくわからないので、実装出来ていないが、それでも簡単な命令くらいであればこなしてくれる。
「ふわぁ……」
僕は大きなあくびを浮かべながらテキパキとリュックの中身を片付けてくれるぬいぐるみをぼーっと眺める。
そんな風にして時間をただただ食いつぶしていると、家のチャイムが鳴り響く。
「……んっ」
僕は神聖術を使って家の鍵を開ける。
「……ったく。毎回思うけど贅沢な使い方だよなぁ、それ。どんだけ神聖力が余っているんだよ」
僕の家のチャイムを鳴らしたのは一人の男……20代後半で無精ひげを生やした僕の友人だった。
結衣と同じ神祇官である加賀谷玲衣は一切の遠慮なく僕の家に入ってくる。
「相変わらず物がねぇな……どんだけ少ないんだよ」
玲衣が僕の部屋を見て呆れたようにつぶやく……勝手に入っておいてすぐの言葉が僕の部屋への罵倒とは如何なものだろうか?
ちゃんと生活するのに必要な家具も家電もあるし、僕が使うぬいぐるみもたくさんある。
十分華やかだ。
「……それ、僕が街の外に出るときも言ったよ。ずっと家開けていたんだから物が増えるわけないでしょ?」
「外で何か物を買って、とかもあるかもしれないだろぉ?」
「外で何を買うのさ……」
ここ以上に物が揃っている街は少なくともこの日本列島にはないだろう。
「おいおい、あまり他の街を舐めるなよ?結構馬鹿に出来ないからな?……よっと、とぉ?」
「あっ、加齢臭つくからベッドには腰掛けないでね?」
僕はベッドに腰掛けようとした玲衣を神聖術で止めて口を開く。
「俺はそんな臭くねぇよ!?そんな歳でもないし!?」
「えっ……?加齢臭じゃないなら玲衣からする独特な匂いは何……?」
「待ってくれ。そんな匂いするのか?俺」
「うん」
「……そうか。そうなのか……そうだったのか。よく考えてみれば若干髪も薄くなってくる兆しが見えてきている気がする……もう、歳なのか……三十路なのか……ッ!」
僕はなんかわからないけど膝をついて項垂れた玲衣を見て首を傾げた。
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