第23話
魔に堕ちかける神を助けるのは簡単だ……その周りにへばりついている魔を浄化し、除去すれば良いのだから。
「……むぅ」
結衣の
「……ッ」
魔が払われた神様。
その姿は小さな童と同じ……その身より生える狐の耳と尻尾さえなければ。
「体がかるぅなったな。どうやら……妾も魔へと堕ちかけていたようだ」
見た目は小さな童でしかなく、そこに恐ろしさなど何も感じない。
だが、『神』を人間などと言う矮小な存在がその目でその姿を確認するなど烏滸がましい。
結衣だけでなくこの場にいた村人全員が半ば本能で跪いて、視線を地面へと下げる。
神様を見てはならない……そんな生命としての本能が働いているのだ。
「……ん。良かった」
そんな中、僕だけは真っ直ぐ神様を眺め、口を開く……何故か僕は人間が神に感じるはずの畏怖をまったく感じなかった。
「……なるほど。お主か」
「……?」
まるで僕を知己の仲であるかのような視線を向けてくる神様に首をかしげる。
「どうやら……随分と汝へと負担をかけていたようだ」
「何を言っているの?」
僕は神様の言っている言葉の意味が分からず、やっぱり首をかしげる。
「わからぬであれば構わぬ……汝にとって何もかもを知ることが良きことであるとは思えぬゆえにな」
「……はぁ」
「汝も汝で特殊であったゆえにな。妾らのことなど気にせず、汝が道を進むが吉であろうよ……くくく。にしても妾ら神が魔へと破れ、そのまま魔に堕ちかけていたところを汝に救われる。真にこの世は何が起こるかわからぬ。ゆえに愉快」
「自分は知らないのに……相手が一方的にこっちを知っているのなんか嫌」
「なんでじゃ。神とは人類を見守る者。妾らが一方的に知っていることが当然よ」
「……それでもなんか嫌……だけど、どうでもいいや。別に。もう、魔になんて堕ちかけないでね?」
「わかっておるとも……案ずるな。散々人の子を喰ろうて力は蓄えた。魔になる過程で蓄えていた力をそのまま妾のとしたのじゃ、今の妾が汚染させた空気と触れあい、堕ちることなどあるまい……今であれば変わらず魔ともやり合えるとも」
「それは」
「わかっておるわ。今の妾がすべきは妾に祈りを捧げしこの村を守ることじゃ。この場より妾から動くこともない。守護者として長き時を見守る」
「ん。お願い」
「わかってておるとも……人間どもに伝えてくれ。この洞窟には近づかぬことと入り口に小さな祠を立てること。それと毎日軽いお供えものをして祈ることを」
「ん。わかった」
僕が神様の言葉に頷くのを見て満足した神様はゆっくりと洞窟の方へと消えていった。
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