第20話

 洞窟の中で快適に暮らしている僕と花蓮。


「……良し、出来た!神聖力による武器の強化!」


「よくできたね。それが出来れば最低限、魔への攻撃手段になるよ」


「おぉー。これで……私も」


「あっ、感激しているところ水を差すのも悪いけど、これだけは釘をさしておくね。どれだけ僕らが強くなろうとも所詮僕たちは人間だ。神聖術を極め、神を宿す武具を幾つも装備した神祇官の二人組でも勝てない魔なんてごまんといる。外に行く任務を帯びた神祇官の死亡率は三割を超えるんだ。全人類が束になってもかなわないような魔もこの世界にはいる……今の人間は、遥かに魔より劣る存在だ。神聖力が使えるからと言って魔を舐め、外を舐めないように。君だけじゃない……僕も結衣もこの世界じゃ弱者なんだよ」


「……っごく」

 

 脅すように告げる僕の言葉を受け、本格的な戦闘用神聖術が使えるようになった花蓮が震えながら息を飲む。


「まっ、上位の魔は人間なんかに興味ないからそこまで恐れる必要もないけどね。ただ、僕は調子に乗らないで、って言いたいんだよ。調子に乗って死んでいった愚か者を腐るほど見てきているからね」


「……なるほど」

 

 僕の言葉に花蓮が深々と頷く。


「わかった。肝に銘じておくわ」


「うん。そうしてね。花蓮が死んじゃったら悲しいからね」


「……ぜろでも私が死んだら悲しい?」


「そりゃね」

 

 僕は花蓮の言葉に頷く。


「えへへ。そっか」

 

 突然当たり前のことを聞いて笑い声を漏らし始める花蓮を前に僕は首をかしげる……知り合いが死んだら人間は悲しむものだろう?


「それなら良かった……」


「まぁ、喜んでくれたのなら何よりだよ……それで話を神聖術に戻すけど、ここまで教えたらもうある程度は独学でも行けるかな?」


 神聖力は神様からの贈り物であり、その力を使って発動する神聖術もまた、神様からの贈り物である。

 神聖力と触れ合えば触れ合うほど、神聖術を使えば使うほど……神様との親和性が高くなって何故か自然とどう神聖力を使えば良いか、どんな神聖術と使えるのかがなんとなく理解出来るようになっていく。


「……うん。そうかも。なんか自然とどうすればいいかわかってくる」


「その域に来れたら後はもう自分を極めるだけだね。どう成長していくは人それぞ……?」

 

 人の気配を感じた僕は言葉を途中で止める。


「どうしたの?」


 そんな僕を見て花蓮が首をかしげる。


「この洞窟に近づいてきている大人が複数……結衣もいる。説得できたのかな?よし、僕たちも洞窟から出ようか」


「……え?」

 

 僕の言葉を聞いた花蓮が驚愕の声を漏らし、固まった。

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