第16話
暗い暗い洞窟の中。
ジメジメとした湿気が洞窟の中を支配し、どこから吹いているのかわからないような冷たく、魂ごと震わせるような風が吹き付けるそんな洞窟。
ただ洞窟にいるだけで本能的な恐怖を覚えるような洞窟の中に少女の泣き声が響き渡っていた。
「ようやく見つけた」
ちょっとした用事を済ませてから、洞窟に生贄として連れ込まれた花蓮を見つけるために洞窟を歩き回っていた僕は、ようやく見つけ出した花蓮へと声をかける。
「……ぜろ?」
この洞窟の中でも少しだけ広い場所の中に、小さな座布団が敷かれているだけの殺風景なところでぽつんと一人腰を下ろして涙を流していた花蓮が顔を上げて僕の方に視線を送ってくる。
「うん。柴旅だよ?元気?」
僕は洞窟の中を歩き、花蓮の前へと立つ。
「な、なんで……ここに?ぜ、ぜろは……ッ、私を助けてくれなかったのに……ッ!」
花蓮は困惑と、そしてほんの少しばかりの敵意がこもった声を上げる。
「あそこで村長と揉めたくなかったしね?……僕は村長に我々の邪魔をするなとは言われたけど、君を喰おうとする神様の邪魔をするなとは言われてないしね?君を守りに来たよ」
「……神様の、邪魔?そんなの……ッ」
「僕なら余裕だよ……というか、ここのコンデイション最悪だね。よっと」
僕は神聖術を発動させて、ここの湿度を下げて住みやすい場所の気候へと変える。
それだけで僕の神聖術は終わらず、そのまま大地を操って椅子や机、ベッドの格子を作り上げる。
「何して……」
「本当なら今すぐにでもここの魔へと堕ちつつある神を叩き潰して元の状態に戻し、サクッとハッピーエンドを迎えたいところなんだけど、結衣のこだわりとして自分が独断で動くのをよしとしていないからね……結衣が村の人たちを納得させるまでここで暮らさなきゃいけないからちゃんと快適に暮らせる場所へと変えようと思って」
「……なる、ほど?いや、でもその前に神様が……」
「それなら心配いらないよ。既にもう神様の身柄は拘束してあるし」
「えっ?」
「でなければもう既に花蓮がここでパックリ食われているか、僕がここで神様と激しい戦闘を繰り広げているよ」
「えっ?」
「神様は堪え性無いからね。生贄が来たら一目散に来て花蓮をパックーンだよ。僕がいなければね……大丈夫だよ?花蓮。僕は君を絶対に見捨てないから。だから安心して」
僕は涙を溜める花蓮の瞳をまっすぐ見ながら安心させるよう頭を撫でながら告げる。
「……うん」
「じゃあ、僕はここを快適にするための羽毛とか取ってくるからちょっと待ってて」
「嫌」
移動しようとした僕の服の裾を花蓮が掴んで止める。
「もうちょっと……私と一緒にいて?」
「あぁ……うん、良いよ」
僕はそんな花蓮の言葉に頷き、彼女の隣へと腰を下ろした。
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