第12話

 結衣が借りてくれた建物。

 借りてくれた張本人である結衣は忙しそうに村を駆け回っているため、全然生活をしていないこの建物には今。

 ここで生活を営んでいる僕以外にも家から飛び出してきた生贄とされてしまう少女、花蓮と璃々夢が一緒に生活していた。


「花蓮ならともかく何故璃々夢まで……?」


 家出中であり、家がない花蓮がここで寝泊まりするのはわかる。

 だが、普通に家族とも関係が良好で家に居場所のある璃々夢がここで当然のように寝泊まりしているのは何故だろか?君はここにいる必要ないよね?


「良いじゃない!家で生活するよりもこっちで生活するほうが楽しいのよ!ご飯も毎回お肉出てきて豪勢だからね!」

 

 僕の疑問に対して花蓮は元気よく答える。

 基本的にどの村でも農業が行われているが、牧畜は行われていない。

 牧畜を行えるほど広くなく、動物に上げるための餌もまともにないのだ。

 

 そして、村の外にはたくさん獣がいるが、その代わりとして魔もいっぱいいる。

 そのために狩猟は危険があまりにも大きく、滅多に行われないため、食卓にお肉が並ぶことなど稀なのである。


「確かにそうですね。ふふふ……最後の晩餐にはぴったりです」

 

 花蓮は璃々夢の言葉に同意し、実に悲しげな笑みを漏らしながら自嘲気味にポツリとつぶやく。


「大丈夫だよ?結衣がなんとかしてくれるよ」


「そうでしょうか?いくら神祇官様でもなんとか出来ると思えませんが……」


「結衣が出来ると言ったのであれば出来るんだよ」

 

「……随分と信頼されているんですね」


「うん」

 

 僕は花蓮の言葉に頷く。


「良い信頼関係だよね!羨ましい!……本当に大丈夫、何だよね?」


 璃々夢が僕に対して心配そうな視線を投げかけながら聞いてくる。


「大丈夫だよ?結衣がすると言ったらするだろうし……しなかったとしても勝手にやっちゃえば良いだけだしね」


「……相手は神様何でしょう?本当に対処出来るのですか?汚染されているとはいえ神様……人間に対処可能だとは思えないのですが」


 生贄が必要な理由……この村の神様の現状の全てを既に知っている花蓮は疑問の声を投げかけてくる。


「問題ないと思うよ?汚染された神様を相手するのも神祇官一人だしね……まぁ、普通は神祇官五人くらいで対処するんだけどね」


「……ッ。じゃ、じゃあ……」


「でも結衣は優秀だから大丈夫だと思うよ?」


「……そう、ですか……」

 

 僕の言葉に対して花蓮は納得がいっていなさそうな表情を浮かべながら頷くのだった。

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