第11話

 お地蔵様の周りを囲っていた魔を倒した僕と結衣は本命である力を失った神様の方へと近づいていく。


「これが神様の核ね」

 

 近づいていく……なんて言い方をしたものの、力を失った眠っている神様に特別感はまるでない。

 眠っている神様のその姿は小さな宝石でしかないからだ。

 別にその宝石に神々しさを感じることも、おどろおどろしさを感じることもない。

 本当に何も感じることのないただの小さな宝石である。


「こんなところによく挟まったものね」


「多分、その神様がこのお地蔵さまに由来のある神様だったんじゃないかな?」


 神様であるその宝石はお地蔵様の首と頭を繋ぐわずかな隙間にきれいに挟まっていた。

 こんなところに挟まっていることは珍しい。

 基本的には眠っている神様の核である小さな宝石は道端にポイって落ちているからね。


「これで私たちに課せられた仕事は以上ね……今回も無事に神様を回収することが出来て良かったわ」

 

 眠っている神様の核である小さな宝石は決して壊れることはない……いや、本当に最高位の魔が渾身の力を振り絞り、自身も眠りにつくくらい力を使い果たせば不可能ではないかも。

 だが、逆に言うとここまでしないと壊れないほどの硬さを持つということでもある。

 

 なので、基本的に眠っている神様の核である小さな宝石が壊される心配はしなくて良いのだが、その代わりとして眠っている神様の核である小さな宝石は魔に汚染され、魔へと堕ちてしまうことがある。

 そのため、眠っている神様の核である小さな宝石の回収は急いで行うべき人類の急務なのである。


「ここじゃ神様を復活させられないし……帰るまでは気は抜けないけどね」


「えぇ。そうね。当然それもわかっているわ。村の問題の解決も行湧きゃ行けないしね」


「うん」

 

 僕は結衣の言葉に頷く。


「とりあえずまずは村の大人たちを説得させるところから始めないとね。さすがに神祇官という立場を持つ私であり、正しい行いだったとしても今まで大きな問題が出なかった以上、変化をもたらそうとする私たちの行いを拒否する人は出てくるはずよ」


「そうだね」


 子供が生贄として捧げられる。

 それが大きな問題として挙げられなくなるほどに今の人類社会の現状は酷い。


「説得できる?」


「出来る出来ないじゃないわ。するの……でも、時間はかかっちゃうかも。だから、私が説得している間に生贄にされる子供と接触してその子を安心させてあげて?」


「うん。わかった」

 

 僕は結衣の言葉に頷く……誰かに寄り添うとか全然出来る気がしないけど結衣に言われたのだ。

 最大限頑張るとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る