第6話
孤児院のような少しばかりの教会っぽさを感じる建物の中へと結衣と共に入った僕はそこらへんに置いてあった椅子の一つへと腰掛ける。
「座るまでがほんと躊躇ないね」
そんな僕を見て苦笑しながら結衣は僕の前の席へと腰を下ろす。
「それで?僕に聞きたいことって?」
「ここの神様についてよ……ちゃんと正常な神かしら?」
「ううん。魔に汚染されちゃっているよ」
「やっぱりそうなのね……それで?どんな状況?」
地上にいる神は今、三種類いる。
力を失い、眠りについている神。
少しばかりの力が回復し、人類に力を貸している神。
そして、魔に汚染されて人類にも牙を剥くようになった神の三種類。
「まだ汚染度は少なく……ちゃんと神としての威光は出せているから村に魔を寄せ付けないという最低限のお仕事は出来ているけど……その代わりに生贄として一年に一回若い子供の命を吸うなんてことをしているみたい……まだ、魔の汚染度が低いからこの程度で済んでいるけど、10年も経てば生贄を求める頻度が上がるだろうし、100年もすれば威光も出さず、人類をただただ襲う『神魔』の一柱になっちゃうかも」
「神魔になったときの脅威度は?」
「日ノ本の中央政府でも対処可能なレベルだと思うよ?大して強い神でもないしね……九州を支配したような神魔にはならないよ」
「それなら良かったわ……でも、子供を生贄にするってのは見過ごせないわね。状況的に見てあの子たちは?」
「うん。生贄になるのが嫌で逃げたみたい。生贄になるのが嫌で死地に飛び出すとか面白いね」
「そんなこと言わないの。まだ子供たちは外の世界なんて知るわけないんだから……子供が死ぬなんて現状は見過ごせない」
「結衣の目の届く限り誰も死なせないがモットーだもんね?」
「えぇ。そうよ」
僕の言葉に対して結衣が力強く頷く。
「私はこの自分の目に映る人すべてを救いたいの。当然、この村において生贄として捧げられそうな子供のことも救って見せる。ねぇ、柴旅。今回も私の夢のため、協力してくれるかしら?」
「もちろん。僕は結衣のためにあるからね」
僕は結衣の言葉に喜んで快諾した。
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