第4話

 小さな魔。

 あれくらいなら一発で終わる……苦戦することもない。


「おー!凄い!」

 

 圧勝した僕に対して璃々夢が歓声の声を上げる。


「でしょー?僕ってば案外凄いんだよ?」


 戦闘能力で言えば全然結衣にも負けていないのだ……僕は筆記試験で毎回落第するから神祇官としては認められないけど。

 日ノ本の中央政府も無慈悲である。

 今は人手が必要なんだし、たとえ筆記試験に落ちるような阿呆でも強いんだから神祇官の称号くれても良いよね。


「ハッ!大丈夫だった!?怪我してない!?」

 

 僕をひとしきり褒めていた璃々夢が魔に襲われ、今にも殺されそうになっていた子供たちへと近づく。

 14、15歳くらいはありそうな少し大きな少女に璃々夢と同じくらいの年齢そうな男子が一人に女子が一人。

 計三人だ。


「……怖かったぁ」

 

 一番大きな少女は璃々夢を前にして深々と息を吐き、放心したように体をふにゃけさせ、小さな男女は今まで我慢していたものを爆発させるように涙を流す。


「大丈夫、大丈夫だよ!泣かないで!ぜろが守ってくれるから!」


 そんな三人に対して必死に宥めるように声を張り上げる璃々夢。


「……」

 

 僕はそんな彼女たちを眺めながらぼーっと立っていた。

 

 ■■■■■


 子供たちが泣き止み、落ち着くまでに10分強。

 今のところまだ近づいてきている魔はいない。


「生贄になるのが……嫌で……わ、私はまだ死にたくなかったから……別の村になんとか行けないかと……」


「うん……そうだよね」


「姉ちゃんが死ぬことはないよな!」


「うん……うん」

 

 宥め終え、泣き止んだその次は謎に会議をしている……早く終わらないかな?

 ここはまだちょっとだけで神の加護の残滓が残っているから魔は普通に近づかないけど、


「……わ、私はもう……死ぬしか……」

 

「お姉ちゃん……あっ!大丈夫じゃん!よく考えなくても柴旅に頼めば別の村まで護衛してくれるよ!良いよね!柴旅?」

 

 璃々夢が急に話題を僕の方へと向けてくる。


「ん?無理だよ?」

 

 話を振られた僕はバッサリとその言葉を切り捨てる。


「あれはたまたま弱い魔だったから簡単に倒せただけで普通の魔だったらあんなにうまく行かないし、普通に僕と結衣が束になっても全然勝てない魔だってゴロゴロいるし、食料も問題だし、体力的にもこの世界を巡るのはキツイ。君たちの村の最寄りの村までここから数十キロは余裕で離れているからね?現実はそんな甘くないよ?神祇官でも普通に遠征中は死ぬんだよ?ただの子供が外に出て別の村に行くとか無理だよ」


「えっ……?」

 

 当たり前の僕の言葉に対して璃々夢を含めた全員が固まった。

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