第40話「お姉様と実家・後編」

第四十話「お姉様と実家・後編」


レオナと一緒にレオナの実家に来た詩音はこの家の当主である老紳士のエドゥインと出会う。

竜王デュオンとは面識があるようで、それを召喚した詩音を認めてくれた様だ。

どうやら家柄や血筋よりも実力を重視して考えてくれる性格らしい。

それを察した詩音は当主エドゥインにレオナとの婚約話を持ち出した。

学園内の婚約ではなく正式な婚約の事である。


「ああ、その事か。その若さでデュオンを召喚できる魔女であれば実力は問題あるまいて。一応貴族の出と聞いておるし反対する理由が無いのう」


「ありがとうございま―」


「ちょっと待って下さい、お爺様!」


「ん?なんじゃリーゼロッテ」


リーゼロッテはレオナの姉だ。

本来なら父の次に自分の夫が、そしてその娘か息子が代々家督を継ぐはずなのに、

婚約者がいない為そうはならないのだ。

このままではレオナがゆくゆくは当主になってしまう。

焦ったリーゼロッテはレオナとの婚約破棄を条件に詩音に決闘を申し出た。

詩音が勝った場合、潔く婚約者である事を認めるという事である。

しかし・・・詩音は今決闘禁止令がレオナから出ており、受ける事ができないのだ。


「申し訳ありません、リーゼロッテ様。その決闘お受けする事はできません」


「逃げるの!?さすが没落無名貴族の方は臆病ですわね」


それを聞いて激高したのは詩音・・・ではなく、いつの間にかいたレオナだった。


「シオン、決闘していいわよ!」


「お姉様!?」


「審判はお爺様、お願いできますか?」


「うむ、久々の決闘観戦じゃ。心が躍るわい」



決闘は一瞬で決まった。

戦闘経験が碌にないリーゼロッテは詩音に手玉に取られ、

ついには杖が破壊され氷剣を喉元に突き付けられた。


「降参、降参するわ・・・!」


「その降参、受けます」


詩音は氷剣をしまうとリーゼロッテに向かって微笑みこう言った。


「これでお姉様との婚約、認めて頂けますよね」


「・・・わかったわ。認めてあげるわよ」


リーゼロッテは不機嫌ながらもレオナと詩音の婚約を認めた。


「よかった~、お姉様~、勝ちましたよ~」


「まったく、どこにいても心配掛けるんだから」


「まったくですわ、シオンお姉様たら」


そのレオナの背後には見覚えのある人影があった。

レオナの姪であり詩音の仮の妹メディナである。


「さあレオナ様、テラスにでも参りましょう」


「ちょっと待ちなさい!私も行くわ」


やれやれ世話の掛かる娘達だと嬉しくもあり面倒だと思うレオナだった。


―2日後


「いや~楽しい2日間でしたねレオナお姉様、シオンお姉様」


「私ちょっと胃が・・・」


メディナからレオナを取られまいとイチャイチャしないよう抑えてた挙句、

詩音を婚約者にするかしないかで揉めてその渦中にいたのだ。

詩音のストレスは頂点に達していた。

しかし次のレオナの一言が癒しになった。


「頑張ったわね、シオン」


「はい!」


「じゃあ私は別の馬車で帰りますわ」


「え、別に一人くらい増えてもいいけど・・・」


「そんな野暮な事致しませんわよ」


「そう、じゃあ遠慮なく」


こうして馬車の中で二人っきりになった詩音とレオナ。

詩音はこれまで甘えられなかった分甘えてやろうと意気込んでいたが、

どうやら疲れていたらしく、その場で寝込んでしまった。

レオナは詩音の寝顔を見て微笑ましくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る