第9話「魔女達のお使いpart1」
「お使い?私とシルフィーヌとですか?」
詩音はアリス裏生徒会長の部屋に呼び出されていた。
普通の生徒の自室とは違う、まるで個人オフィスの様な一室である。
「そうなの~。紅茶の葉でね、貴重な物で王都じゃないと売ってないのよ。シルフィーヌはそこのお得意様だから手に入るって訳」
「しかしシルフィーヌも魔女なのだから私がいなくても大丈夫だと思いますけど」
「実はお使いはついででね、シオンちゃん、シルフィーヌちゃん、あなた達の正式な魔女認定を王都で行いたいのよ」
「魔女ってそういう物なんですか」
「そういう物なのよ」
どうやらアリス裏生徒会長の話によると魔女とはこの学園限定の存在ではなく、
世界各国に存在する超級の女性魔術師の事であるとか。
そしてこの学園は王都に強いコネがあるらしく、
実力と教養さえ備えていれば学園の推薦と言う形で王都公認の魔女になれるらしい。
(教養と言う点の合格ラインはエリシアを見てると怪しい物だが・・・)
他の学園の魔女達は既にこの認定を受けてるらしく、魔女として国からの特別な任務を受ける事もあるとか。
それだけではない、国中の研究機関を自由に扱えるので戦闘面以外でも魔術を極めたい詩音にとっては願ってもない話だった。
「分かりました。行くわよシルフィーヌ」
「行ってまいります、アリス様」
「いってらっしゃ~い」
詩音とシルフィーヌはアリスに深々とお辞儀をすると、部屋から出た。
―
「ふふふ、楽しみですわね、シオン様」
「ええ、この大陸中の研究機関やその施設が使えるんですものね。楽しみだわ」
「(そういう意味で言ったのではないのですが・・・)」
ガァアアアアアアアアアアア!!!
微妙に噛み合ってない二人に割り込む様にモンスターの咆哮が聞こえて来る。
この声はオークであろう。
それも一匹や二匹ではない、数十体の大群だ。
どうやら商人の馬車を襲っている様である。
「行きましょう!シオンさん!」
「はぁ…仕方が無いわねぇ」
詩音はシルフィーヌに手を引かれオークの群れの前に出た。
そして馬車に向かってシルフィーヌが叫んだ。
「皆さん、馬車に乗って下さい!馬車と馬は私が避難させます!」
突然の事に驚いた商人だったが、藁にも縋る思いでその指示に従った。
「風よ!」
シルフィーヌが叫ぶと馬車と馬が天高く上昇していく。
やがてオークの手の届かない所にまで浮遊しそれを維持していた。
「後はシオンさん、お願いします!」
「戦闘担当は私って訳ね・・・でもこの数相手に骨が折れるわ。仕方ない、ブック!」
詩音がそう叫ぶと古びた魔術書が現れる。
そう、転生時に授かったあのチートな魔術書だ。
本来は貰い物の魔術書の力なので使いたくは無いのだが、それを解読して扱うのも実力の内、と割り切る事にした。
「じゃあ私も風魔法で・・・風よ、荒れ狂え!」
突如発生した暴風は周囲の木々を薙ぎ倒し地形を変え、オーク達の巨体を軽々と吹き飛ばした。
あの高さから落ちるのだ、無事では済まないだろう。
無論後方にいた商人達の馬車は避けて攻撃したのでそちらに被害は無い。
「凄い・・・私なんて相手にもなりませんわ」
「そんな事ないわよ、シルフィーヌ。あなたの浮遊魔法も十分高等魔法じゃない」
謙遜しあう二人。
一方で馬車の中にいた商人はいつ下ろして貰えるのかそれだけが気がかりだった。
―
「申し訳ありません、お話に夢中になってしまいつい・・・」
助けた商人に何度も頭を下げるシルフィーヌ。
商人は笑顔でそれに問題無いですよと返答した。
そして詩音が早く王都に行こうと進言したら商人が割って入り―
「私の店がちょうど王都にありましてな。洋服店を営んでおるのですが、お二方の服、作らせてはくれませぬか?もちろん無料で」
「え!?そんな・・・悪いですわ」
「いいじゃない、制服で王都に行くのも場違いだしドレス位着ても」
最終的に詩音が押し切る形で商人の店に寄る事になった二人。
果たして無事王都に着くことができるのか?
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