第8話「裏生徒会」
ここは魔女を名乗る乙女達の集う裏生徒会。
魔術を極めし称号「魔女」を持つ女生徒やその候補生達が麗しい日常を日々過ごしている。
ある日詩音は裏生徒会もとい、お客のいない喫茶ポワレに呼び出されていた。
「今日は喫茶ポワレはお休みな筈だけど?」
「まあまあ落ち着いてシオンちゃん。今日は裏生徒会としての用事なんだよ」
帰ろうとする詩音をなだめる氷の魔女エリシア。
詩音が出口の戸に手を掛けたその時それは開いた。
そこにはまるでお人形の様な美しい白髪の少女がいた。
「おお、待っていたよシルフィー」
「シオンさん、でしたよね?シルフィーヌです。風の魔女をさせて頂いております」
彼女の名はシルフィーヌ。
詩音と同じ1年生であり、その優等生ぶりは生徒会長である詩音の耳にも届いていた。
「あなたも魔女なのね。ならさっそく決闘を・・・」
「申し訳ありませんシオンさん。私、戦いには興味がないんです。それよりエリシアお姉様、ちゃんとシオンさんにお茶会の説明をしなかったんですか?」
「すっかり忘れてたよ~。ごめんねシルフィー」
「ちょっと待って。お姉様って、あなた達姉妹なの?」
「血の繋がりはないけどね。というか師弟関係みたいな感じ?」
「ああ、そういう・・・」
この手の小説を読んだ事のある詩音は超速理解した。
お姉様と妹といういわゆる百合関係的な奴だ。
「まあそれはいいわ。それよりお茶会って何?」
エリシアがコホンと咳払いをすると
「私達魔女の交流の場さ。ポワレでシフト被りはあってもプライベートじゃ滅多に集まらないからね」
「そう、他の魔女にも会えるのね」
「そうだよ。君の紹介も兼ねてるからね、シオンちゃん」
時間が経つにつれ何人かの女生徒が教室に入って来る。
いずれも魔女かその見習いの高位の魔術師と言った所で、成績優秀な生徒ばかりだ。
その中にはかつて戦った雷の魔女イクリーサもいた。
「意外ね、あなたがお茶会になんて出るなんて」
「アリス裏生徒会長のご命令ですもの。仕方が無いわ」
どうやらあの天の魔女ことアリスは相当の実力の持ち主らしい。
ますますアリスと戦うのが楽しみになった詩音であった。
そして今回のお茶会の主催であろうアリスがやってきた。
「魔女と魔女見習いの皆さん、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
詩音含めその場の全員がアリスに挨拶を返す。
そしてアリスが詩音の方に手を向ける。
「みんなもご存知の通り表の生徒会長の天道詩音さんが“地球の魔女”としてこの裏生徒会に入りました。歓迎の拍手を」
拍手喝采とまではいかないが歓迎の拍手が詩音におくられる。
詩音は照れる様子もなく周囲に一礼した。
この様な状況、現代では日常茶飯事だったからだ。
一々舞い上がって等いられない。
「さあさあ、堅苦しいのはなしなし!今日は無礼講だよ!」
「お姉様は少し慎んで下さい」
エリシアが宴会のおっさんみたいな事を言い出すが妹役のシルフィーヌがそれを諫めた。
一方詩音は一息入れようと紅茶を口に含んだ。
「あら、これおいしい」
「お気に召して頂いて幸いですわ」
「この紅茶シルフィーヌが入れたのね。とてもおいしいわ」
こういう雰囲気もたまには悪く無いと思った詩音であった。
―
お茶会も無事終わり皆がだいたい帰った時である。
1年であるシルフィーヌと詩音が片付けの為に残っていた。
詩音とシルフィーヌ以外に1年生がいないのだ、仕方が無い。
それにこれはシルフィーヌが自ら買って出た仕事でもあった。
遠慮するシルフィーヌを無視し、詩音は手伝いを申し出た。
「さて、みんなも帰った事だし一勝負する?シルフィーヌ」
「ご冗談を。まだ片付けが残ってますし、私にその気はありません」
「せっかく魔女になったのにその力を試してみたいとは思わないの?」
「思いません。私はお姉様の側にいられればそれでいいんです」
「ふぅん、一途ね。まあ強制はしないわ」
決闘決闘と騒ぎ立てる場でも無いと察している詩音はしばらくはこの裏生徒会のノリに合わせる事にした。
給仕も百合の演技にも自信がある。
決闘はいずれ向こうからやってくる事であろう。
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