第10話「魔女達のお使いpart2」


結局何事も無く王都に付いたシルフィーヌと詩音。

途中商人を狙った野盗やら魔物だのが現れたが全て撃退した。

二人は商人の馬車に乗せて貰っているので、

道中の馬車代が浮いたと思えば安いものである。


「さあ着きましたぞ」


「シオンさん、起きて下さい。着きましたよ」


「むにゃ・・・もう朝食の時間?」


「何寝ぼけてるんですか。商人さんのお店に着いたんですよ」


時計を見るとまだ朝の4時だ。

この現代の時計が合っているかは分からないがとにかくまだ眠いのは事実だ。

つまりまだ早朝、起きるべき時間ではない。

学園を離れ完璧超人を演じる必要がなくなった詩音はすっかりだらけた性格になっていた。


「いい加減に・・・して下さい!」


「ほへ?」


シルフィーヌが弱い風魔法を詩音の顔に当てると、ドライヤーの強位の風が詩音の顔を襲った。


「ぶううううううううう!?」


「目が覚めましたか、シオンさん」


「ひゃい、ひゃめまひた(はい、覚めました)」


「よろしい。では洋服屋さんに参りましょう?」


こうして二人は商人の案内でお店に入った。

そこには豪華絢爛な紳士淑女の衣服が並べられていた。

とは言ってもお嬢様育ちの詩音には見慣れた光景だったが。


「ではさっそく採寸から始めさして頂きます」


洋服屋の主人は慣れた手つきで採寸を行っていく。

お嬢様モードに切り替わった詩音は微動だにしない。

どうやら服の作り方に関しては道具の差はあれど現代も異世界も大して変わらない様だ。


「さあ、終わりましたよ。後は完成まで一週間程頂きます」


「一週間でできるんですか!?」


驚くシルフィーヌと詩音。

オーダーメイドのドレスと言えば現代でも数ヶ月は掛かると言うのに。


「命の恩人ですからな。最優先でやらせて頂きます。それにウチの職人は魔法も使いますから早いですぞ」


「分かりました。それでは私達は王都で見物でもさせて頂きます」


さっそく観光気分の詩音に対しシルフィーヌは・・・


「細かい採寸が必要になったら呼んでください。使い魔を置いていくので」


シルフィーヌは小鳥を詩音は狼を使い魔にしており、連絡用に店に置いて来た。

相変わらず気の利く娘だと関心する商人だった。



「ふぅ~、疲れたー!王都観光するわよー」


「その前に紅茶の茶葉を仕入れる方が先ですよ」


「ふぁ~い」


生返事する詩音をたしなめるシルフィーヌ。

普段エリシア相手に慣れているのであろう。

さあ目当ての茶葉を扱う高級雑貨店まで向かおうとしたその時である。


「もーらい!」


「あ、私のお財布!?」


帽子を被った少年?が詩音の財布をスリ盗った。


「まあまあ、いけない子」


「何を悠長に!私の全財産が入ってるのよ!あのクソガキ、追い掛けなくちゃ!」


「シオンさん。言葉遣いが乱れてますわよ」


シルフィーヌがなだめてる頃には詩音と少年?は姿を消していた。


―とある路地裏


「へへ、上手くやったぜ」


「おっと、誰に断って仕事してるんだ坊主?」


「ちっ、盗賊ギルドの世話にはなんねーよ!」


少年?が逃げようとしたその時である。


「へへ、逃がさねえぜ」


「こっちは行き止まりだ」


盗賊ギルドの盗賊と思われる数人が少年?の逃げ道を塞いだ。


「くそ、万事休すか・・・」


「ここから先は通さね―ぐはっ!?」


見張りの一人、いや二人があっという間に倒されその場に倒れ込む。

それをやったのは追いかけて来た詩音であった。


「その子を渡しなさい!」


「てめえ、こいつの仲間か!」


「違うわよ!その財布の持ち主!」


「なら渡せねぇなぁ。財布はもう俺らのもん―」


「答えは聞いてない!」


詩音の強烈な蹴りが盗賊の腹に決まった。

そう、詩音は武術もチートだったのだ。

くずれ落ちる大将格らしき大男。

そして逃げようにも腰が抜け逃げられない少年?の前に詩音が立ち塞がった。


「私は女の子相手だからって容赦しないんだからね!」


「え、気付いてたの!?」


「当たり前よ!」


どうやら少年は少女だったらしい。

10歳前後であろうその少女は財布を詩音に素直に返した。

そして・・・


「姉御と呼ばして下さい!」


「じゃあさっそく王都を案内なさい」


「あいあいさー!」


「本当に仲が良いわね、あの二人」


やかましくも微笑ましい光景に安堵するシルフィーヌであった。








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