ゴールデンウィーク

 五月五日、ゴールデンウィークがやってきた。

 学園に入学してから一か月しか経っていないのに翔はどっと疲れていた。

 ゴールデンウィークは寮ではなく朝食を食べたら自宅に帰る事になっている。みゆさんが学園まで迎えにきてくれた。

 

「お待たせいたしました。おぼっちゃま」

 みゆさんが車から降りてきて車の扉を開けて出迎えてくれる。

「みゆさんおぼっちゃまは辞めてって言ってるでしょ」

 翔は頬を膨らまし抗議する。

 

「申し訳ありません」

 みゆがつい癖でと思い謝罪する。

「母さん絶対つい昔の癖でと思ったでしょ」

 と繭はみゆが思った事を突いてくる。

 

「お荷物お持ちします」

 と翔から荷物をもらい繭の荷物を奪う。

「母さんどうしたの?」

 繭はまさか母さんが私の荷物まで運んでくれるとは思ってもおらず驚く。

 

「別に何でもないわよ」

 と荷物をトランクに入れ運転席に座る。繭も不思議そうな顔をして翔の隣に座る。

 

「今日は旦那様と奥様が帰って来ております」

 と車を運転しながらみゆさんから報告を受ける。

「えっお父さん達帰って来てるの?」

 翔は両親帰って来てる事に驚く。毎年数回しか家に帰って来ず正月ゴールデンウィークお盆くらいだったがゴールデンウィーク初日からいる事は初だった。

 

「はい今朝お帰りになっています」

 とみゆさんが教えてくれる。

「うーんたぶんあの事かな?」

 両親が帰って来て嬉しい翔ではあったが入学一か月で魔力暴走が一回あって、昨日は属性魔法の使用と怒られそうな事があった。

 

「大丈夫よ翔は、翔様はなんも悪い事はしてないもん」

 と繭は言ってくれる。レクリエーション以来繭は翔君から翔と呼ぶようになったが、慌てたりすると学園でも翔様となり周りに説明しなくてはいけなくなったことが暫しある。今はその逆で学園の普段の呼び方じゃなくて様がいると繭は判断して、言い直した。

 みゆさんはその事には突っ込まなかった。多分予想していたのか学園での呼び方には許容してくれているのか繭はビクとした様子でみゆさんを見ている。

 

「繭何?」

 みゆさんは繭の視線に気づき聞いてくる。

「何でもないです!」

 と繭は言い窓から外を見る。

 

 車を走らせて二十分自宅に到着して、翔は緊張しながらリビングに入る。

「翔、繭ちゃんお帰り」

 翔の母香月が笑顔で出迎えてくれる。

 

「だだいまお母さん」

 翔は笑顔で答え繭は頭を深々と下げる。

 

 翔は席に座り

「失礼します」

 と繭は自分の部屋に退室しようと声をかけると

「繭ちゃんも居ていいわよ」

 香月が言う。

 

「いいのですか?」

 と繭が伺い翔の父豊が頷き、繭は眉を寄せて重々しく席に座る。

 

「まず初めに学園の様子を聞こうか」

 と豊が翔、繭を見て話す。

 翔は学園に入学して友達が出来た事や楽しかった事を話、繭もほとんど同じ内容を話す。その後にレクリエーションで起こった事と昨日の魔力制御の出来ごとを伝えてる。

 

「うーんそうか強化魔法は一級指定だったな悪い事をした」

 と豊が謝る。強化魔法は無属性魔法で強化魔法がある事を知らないと六属性とは思わない。翔や繭が知らなければ問題にはならなかった案件だった。

 

「いえ僕もうっかりしてました。お父さんが強化魔法を教えてくれたお陰で、昨日暴走仕掛けた同級生を助けれましたし」

 翔は悪い事では無いと父に言い、強化魔法を教えてもらえたからこそ感情を抑える時に、強化魔法を使い身体の魔力許容量を一時的に上げることができる事で助かってる事を翔は伝える。

 

 豊からは学園での出来事のお叱りは無く終わったが

「翔君、繭ちゃんを置いていったのはなぜ?」

 と香月は話を戻し豊は頭を抱える。

 

「えーっと」

 翔は繭の顔をちょちょく見て下を向き押し黙る。

 

 香月はまだ二人は両想いとは気づいていなくて、繭が翔に好意を持っていて初恋と前から知っているし、以前魔力検査の時に、ここに居るメンバーに知られたが、翔のみが繭の好意は家族としてと、なぜか勘違いしている事に気づき、翔は繭の事を好きではあるがまだ恋愛とは分かっていないと気づき

「翔は繭ちゃんの事好きよね?」

「はぃ」

 翔は小さな声で答え、リビングにいた、座っている豊、香月、繭と立っているみゆが、小さな声を聞き取り

「それはどう言う意味で?」

 と香月が確かめるように聞き

「妹のように?」

 と翔は首を傾げ

「なるほどね」

 と香月は普段の話のトーンを一つ下げ言う。

 

 翔は母の顔を見ようと顔を上にると母は呆れてる顔をしていた。

「繭ちゃんも大変ね!」

 と香月は繭に申し訳なさそうに言う。

 繭は翔の二ヶ月ほど後に産まれ賞は妹の様に可愛がり家族として好きと思っていた。

 

「あはは」

 と繭は翔から恋愛感情がない事に気づき苦笑いをする。

 豊はハーとした顔をして香月を見ていて、みゆさんはなんとも言えない顔をしていた。


 ゴールデンウィーク最終日、昨日豊と香月は仕事に出かけいつものメンバーだけになった。

 翔は宿題をして両親が居る時に魔法訓練の質問案内のプリントを渡しての内容を書いてもらった。

 

 繭はリビングの話の部屋に戻り、次の日の朝になっても朝起こしに来なかった。代わりにみゆさんがお越しに来て、みゆさんからは風邪と伝えられた。

 

 最終日もみゆさんが起こに来て、翔が心配に繭を聞くとみゆさんは風邪と伝えてくる。

「昨日お父さんお母さんが仕事行く時もいなくて今日も風邪?」

 翔は涙目で声を強めみゆさんをじっと見る。

 

「えーっと、困りましたね」

 みゆは本当のことを言おうか、繭の母親として風邪と言いそっとしておこうか迷っている。

 

 繭は風邪では無く、リビングの話の後部屋に塞ぎ込んでいた。みゆや仕事に行く前香月が声をかけたが部屋から出て来ず鍵が掛かっている。食事は部屋の前に置き一言いいそっとして離れ、いつの間にか食べ終わった空の食器が廊下に置いてあるから食事は食べてはいるが今もなお塞ぎ込んでいた。

 

 繭は翔が家族としか思っていないと分かり、繭的に積極的にアピールしていたのに振り向いてもくれていないとショックを受けていた。翔も同じ気持ちで間違ってはいないが、翔はまだ恋愛とは気づいていなかった。

「実は繭は塞ぎ込んでいまして風邪ではないんです!」

 みゆはこのままではいけないと思い翔に塞ぎ込んでいるがご飯は食べていて大丈夫だと話す。

 

「何で?!」

 翔はびっくりした顔て答え繭が塞ぎ込んでいる理由を考えるが思い当たらない。

「えーっとですね。繭は翔様の事恋愛として好きなのですよ」

 とみゆは打ち明ける。リビングの一件後に香月とみゆは話をして繭は翔の事を恋愛の意味で好きと理解しているが、翔は母がが将来お嫁さんになってくれると言う話は母が勝手に言っていて、繭は家族として好きと言ったと勘違いしていると、香月とみゆが話をした。

「ドン」

 みゆが言い淀んでると翔は部屋から飛び出して繭の部屋に駆けていく。

 

 繭の部屋の扉の前に着くと

「コンコンコンコン」「繭?」

 と翔が扉を連続でノックし問いかける。

「ガタン」

 部屋の中から音はしたが返事はない。

 

「コンコン」「繭?大丈夫」

 翔は繭が部屋の中にいる事は分かったが返事がない事にノックをゆっくりして問いかける。

 

 翔は問いかけるが返答が無く心配すると後ろからみゆが歩いてくる。

 翔は後ろから足音が聞こえ振り返りみゆさんに

「繭が、返事、ないんだけど」

 と涙目になりみゆに助けを求める。

 

 みゆは翔の表情をみてハッとして

「落ち着いてください」

 とみゆは翔に感情を抑えるように言う。まだ翔は魔力の暴走まで魔力を膨れてはいないが、時間の問題だった。

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