暴走編4

 郷田先生が翔を指で刺し翔の他の適任者を探す。

「この場では彼以上に魔力量のあるものはいない。一級のワシでも、暴走した子までの魔法量をカバーできん」

 と郷田がキッパリ言う。郷田は一級魔法師らしい。

 郷田の言っている事は理解できても納得はできない先生はいるが言い返せない。

 

「翔頼む」

 昴先生が翔に頼み翔は佐藤の近くによる。防壁で中には入れず中の音も聞こえないが、佐藤はうめいている事は見てわかる。

 

「準備はいいか?」

 郷田が翔に聞き時は頷く。

「防壁解除しろ」

 郷田の罵声が響き他の先生達が腹を括った。防壁は解除され万が一に備えて心臓を貫く為魔法を準備している先生がいる。

 

「ヴヴァヴゥ」

 と悲鳴が聞こえ倒れ込んでいる佐藤の元に翔は駆け寄る。

 

「大丈夫だ」「ゔっ」

 翔は右手で佐藤と左肩に触れると翔の手首が切り裂かれ血が垂れる。魔力に攻撃魔法が組み込まれていた。風の魔法だと思う。被害が軽度だったから全ての魔力が変わったわけでは無い。

 

「大丈夫か!」

 郷田が大きな声で聞き翔は意識を集中して佐藤の魔力を自分に少し宿す。

「佐藤君聞こえる?これから身体強化をするから僕の魔力に意識を集中して」

 と翔が佐藤に問いかけ、翔は身体強化をして少し魔力を佐藤に送り返す。

 

 二人の魔力が繋がり佐藤は身体強化をした状態になる。魔力許容量は佐藤はオーバーしているが翔は何とか許容量内に収まった。佐藤のオーバー分を翔が魔力をもらって佐藤の暴走を抑えた。

「おー」「良くやった」

 先生達は歓声をあげ郷田は褒める。

 

「二葉さん大丈夫ですか?」

 昴先生が翔に魔力許容量は大丈夫かと聞く。

「ギリギリですけど感情は穏やかなので大丈夫です」

 と翔が昴に答えると、昴は少しでも感情が爆発していたらやばいって事だよね!と理解して冷や汗をかく。

 

「もう佐藤さんは大丈夫なので手を離して大丈夫です」

 昴は翔に佐藤の肩から手を離してもいい事を伝え翔は手を離す。

「救護台!」

 佐藤肩から手を離すと身体強化を切らした佐藤が横に倒れ込んで一人の先生が救護台と声をかける。

 

 佐藤は体育館から運び出され何人かの先生が体育館から退出する。郷田、昴、数人の先生が体育館に残る。

「大丈夫か?」

 郷田が翔に尋ねてくる。

 

「今ここでこの前みたいな事があれば無理です!」

 と翔が言うと、昴、残っていた先生が思い出し顔を青ざめさせる。

「冗談言える余裕はあるみたいだな!」

 郷田はこの前の事は知らないので、首を傾げたが余裕があるみたいで安心している。

 

「このまま解散とは流石に危険だな。多分魔力量は超えて許容量ギリギリだろ?」

 と郷田は翔に聞く。

 

「そうですね!」

 翔はマジやばいと訴えるが感情が揺れなければ大丈夫だと思っている。翔は魔力量が超えても許容量まで貯める事は出来るが、感情は普段の魔力量でも暴走することがあるから感情を優先して欲しいと思っている。その為近くに繭を置いて置かなかった。

「うむ。少し早いが属性魔法を使って魔力を使うか」

 郷田は翔の許容量ギリギリの魔力を属性魔法を使って消費する事を勧める。

 

「郷田先生それは……」

 と他の先生がまたもや難色を示すが

「二葉翔さんは身体強化をマスターしています。ゴールデンウィーク明けから属性魔法の勉強もして行くので少しくらいは今回の件よりは些細なことです」

 昴先生は賛成の意を示して

「大丈夫ですかね?」

 他の先生が心配する。

「責任は郷田先生が取ってくれます。そうですよね?」

 昴先生が郷田先生に聞くと

「うむ問題ない」

 と郷田が言う。

 

「二葉さんの親御さんに説明とかは」

 と他の先生が言う

「二葉にはわしから言っておく。昔の教え子だからな!」

 と言いそっからは誰もなんとも言わなかった。

「それでは属性魔法を教えます。二葉さんは何属性を使えるかご存知ですか?」

 と昴が属性を聞く?

「わかりません。父が木、風、母が火、土が得意と聞きました」

 と翔が思い出しながら言う。

「なら土で行きましょう被害も少ないですしね」

 と昴が言い土の二級魔法を教えてくれる。

 

 普通は五級から順に覚え試験があり、合格して次の階級になり卒業の時に階級の資格がもらえるのだが、魔力量が多い翔は最初から二級魔法を教えても、行使できると昴は思い教える。五級魔法だと魔力が全然減りそうにないと思ったのもある。

 

「それよりこっちの方がいいだろ」

 と郷田は話に入ってきて土の一級魔法を教えてくれる。他の先生は外方を向いている。

「覚えたな!なら使ってみろ」

 郷田は翔に聞き翔が頷くと使っていいと言う。

 

 翔は心の中で詠唱をして

「行きます」「うむ」

 魔法を使うと言い郷田が頷く

「アースドラグーン」

 翔は土の一級魔法を詠唱無しで放った。

 直径50メートル程の大きな岩が3メートル上から落ちてきて

「ゴーーーーン」

 と大きな音を立てて体育床を突き破った。

 

「あわわわ」

 翔が被害を見て慌てる。

「二葉さん落ち着いて、予想してましたから問題ありません」

 昴が翔の感情を乱さないようフォローする。

 

「うむ予想通り」

 郷田が大きな岩を見て喜ばしく言う。

「二葉さんは気にしなくていいですよ。全て郷田先生が責任取りますから!」

 と昴は言い他の先生は何度も頷く。

 

 一級魔法は大きさ被害が規格外になる魔法で使用できるものは一級魔法師だけと言われている。全属性の中では土魔法が最小被害と言われている。昴は二級魔法にしようとした理由は、二級魔法はアースチェインと言い砂の塊が何個も出て撃つ攻撃の為、一級より被害が少ないから勧めたが郷田先生が考えていなかった。責任は郷田先生にある。

 翔は魔力許容量は平常の魔力に戻ったので教室に戻って解散となりゴールデンウィークに入った。まだ魔力制御の終わっていない生徒はゴールデンウィーク明けにする事になった。ちなみに教室に戻る前まだ魔力が平常以上あった為、他の先生の助言で運動場に移動して端の方にアースドラグーンを何発か撃ったのだった。

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