教会編1

 八月一日

 「おはようございます」

 朝、目が覚めると隣から挨拶の声が聞こえた。

 隣にいたのはメイド服姿の志波繭だった。

 翔は日本有数の能力者の家系で世界特魔同盟の日本代表を親が勤めている。

 

「あーおはよう」

 翔が繭に声をかけると繭はニコッと笑顔で

「お着替えしますね」

 と言い上着脱がしてきた。

 下も脱がそうとしてきて

「こっちは自分でするから」

 と恥ずかしくなり、ズボンを取り上げ後ろを向き自分で履く。

 

「もー私の仕事なのに」

 と繭が頬を膨らませてパジャマを回収している。

「コンコン」

 扉がノックされ一人の若い女性が入ってくる。

 

「おはようございます。お着替えできましたでしょうか?おぼっちゃま」

 そう声をかけたのは見るからに二十代と見える女性がやってきた。

「お母さん邪魔しないでよ」

 繭がそう母に答えると

「ここではメイド長と言いなさい」

 と繭に注意する

 若いと見える女性は繭の母親兼メイド長のみゆだった。

 

「おはようみゆさん」

 翔はメイド長のみゆに挨拶をし

「繭はしっかりと仕事してたよ」

 と伝える

「そうですか、安心いたしました」

 メイド長は笑顔になり

「お食事のご用意ができております。今日は魔力検査の日になっております」

 と答えると扉を開けリビングに案内する

 

 ここの家には翔、繭、繭の母兼メイド長みゆ、その他に女性メイド二名、料理人が住み込みで住んでいる。

 翔の両親は世界特魔同盟国の日本代表なので、世界各地に飛んでいたり特魔本部に常駐していて不在がほとんどだった。

 

 リビングに到着し朝ごはんを静かに食べる。食事は翔、繭、みゆの三人で食べている。

 三人が食べ終わると

「今日母さん達は来られそう?」

 翔がメイド長に聞くと

「申し訳ございませんが来られないと連絡いただいています」

 メイド長が申し訳なさそうに答え

「気にしなくていいよ。いつものことだから」

 翔は気にしてない顔でそう答える。

 

 翔は小さい頃から両親とは年に数回しか家に帰って来ず、メイド長のみゆに育てられ、繭と二人で育ったと言っても過言ではない。

 教育に関しては教師が幼い時からついていて、言葉遣いや勉強などが、六歳とは思えない程になっているらしい。

 繭は母兼メイド長のみゆさんから、メイドの指導その他の教育を受けている。

 

 九時に教会まで車で移動し魔力量検査を行う。

「二葉翔さん一番までお越しください」

 と教会員から声がかかる。

 今日の教会はいつもと違い今年六歳になる子供が集まり順番に魔力量を検査する。

 

「はい」

 と翔が返事をしてみゆさんと一緒に一番って書いてあるテントに入っていく。

 

「二葉翔さんですね。こちらに手をかざしてください」

 翔に指示をしたのは教会員の女性だった。

「わかりました」

 翔は答えながら手を水晶にかざす。

 

「眩しい」

 手をかざすと水晶がものすごく光り気がつくと目の前の水晶が粉になっていた。

「え………」

 教会員の女性が困惑して何も言えずにいた。

 もちろん翔もみゆさんも同じである。

 

「何事だ」

 大きな声で男性が飛び込んで来た。

「えーっと」

 教会員が困惑しながら状況を入ってきた男性に耳うちしている。

 

「二葉翔さんこちらにお越しください。奥で話があります」

 そう言い男性が丁寧に奥の部屋に案内する。

 翔とみゆさんが奥の部屋に入ると今回の状況に説明をしてくれる。

 

「水晶は魔力量で光の大きさが変わります。平均は普通の灯程で魔力量が多くても少し眩しい程度ですが、今回は水晶の許容量を超えて粉になったと考えられます」

 そう教えてくれたのは教会員とは違い、国が派遣した検査員だった。今回初めて水晶が粉にはなったが何件かものすごく光を放った事例があるため、国も派遣しているのだと説明してくれる。

「二葉翔さんは二葉特魔代表のお子様と言うこともありますのでご両親にもお話したいのですが今回はお見えになられていないのでしたね。報告はこちらで致しておきますのでお帰りいただいて大丈夫です」

 丁寧に対応してくれたと言うか、どう対応していいのかわからないから後回しって感じになりその場を後にした。

 

 フロアーに戻ると繭が椅子に座っていてソワソワしている。

「なんかあった?ありましたか?」

 と心配そうに聞いてくる。

「あったようななかったような?」

 翔もうーんと言う感じで答える。

 

「志波繭さん一番にお越しください」

 と教会員から声がかかる

「おぼっちゃまはお待ちいただいてよろしくですか?」

 みゆさんがそう言い繭と一緒に一番に入って行った。

 

 繭は少し強めにに光って何事もなく終わり家に着いた。

「ふー」

 翔が椅子に腰をかけ一息ついた。

 

「お疲れ様でした」

 みゆさんがジュースを出してくれる。繭は自分でジュースをもってきて隣に座りジュースを飲む。

 翔はジュースを飲みながら繭に教会であったことを話す。

 

「翔はすごいんだね」

 と繭は喜んでいる。

 

「繭!」

 みゆさんが言葉遣いに注意すると

「まーまー今は休憩中だからいいんじゃない」

 と翔が繭のフォローに入る

「申し訳ございません」

 とみゆさんが謝り楽しく話が弾み夕ご飯食べてお風呂に入り就寝するのだった。

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