第3話
美しい音色が聞こえる。
「……魔術……身体……に……検査……」
「……はい。刺されたんです。目の前で。でも刺された痕がどこにもなくて……」
鳥のさえずりよりも、ささやかで、心地よい。まるで……ハープとお紅茶と貴婦人のような音。
「美しい朝だ」
「うわっ!起きた!」
「君は……美しき星じゃないか。待っていてくれたんだね」
「はい。よくわかりませんが、感謝の言葉を伝えたくて」
おそらく告白の返事だ。
白い陶磁器のような肌もうっすらと朱く染まっている気がする。
「あの、助けてくれてありがとうございました。あの人ストーカーみたいで。怖かったんです」
「当たり前の事をしただけです」
クールに決める。
こちらからアクションをかけるべきじゃない。
彼女は恐ろしい体験をしたばかりだ。
気持ちは伝えた。この後だ。きっと。
「本当に助かりました。では、私はこれで」
星は流星のような勢いで、僕の目の前から消えた。
「今日の夜、布団の中で思い出して、枕に顔を埋めながら好きになるパターンかもしれんな」
「……頭の異常はあるかもしれないが。身体は問題無いかい?」
お紅茶と貴婦人の音色が聞こえる。
振り向くと、異世界がそこにあった。
宇宙を表現したような、広大で漆黒の髪。
窓から吹く風も、彼女の宇宙には、夜凪に等しいだろう。
そんな宇宙の下には、青い湖のような瞳。美しく、優雅で、鋭く。
その湖の周囲を守る。銀色で透明な
彼女の鋭さで、他者を傷つけない為にできた優しさと言えるだろう。
ただ、その結界の下には小さな黒い綻びがあった。
どこか厳格な雰囲気を持つ彼女の小さな隙。魅力と言っても過言ではないだろう。
「大丈夫です。この後、天体観測でもどうですか?」
「君、ここの国民じゃないよね?ここ病院。お金ある?」
そうか。
「国民健康保険って後から入れましたっけ?」
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