第4話 天文部合宿

 授業終了後部員全員一度部室に集合となりました。

 天文部部室で私は部員と顧問の先生を前に、今後の活動スケジュールを説明することにしました

 「『美咲<みさき>』先生、合宿参加有難うございます、今後のスケジュールを説明いたします」

 先生もうなずいてくださったので


 「まず、家庭科室で夕食を作るために、部員たちは班分けいたします。班分けは以下のとおりです

一班:買い出し後にお風呂へ行く

二班:料理の準備をしてからお風呂へ行く

三班:お風呂に行ってから料理をする


 このように班分けすることで、効率的に活動を進めることができます。

 それではより詳しく説明します。


 一班:買い出しの際には、必要な食材や調味料をリストアップしてからスーパーへ向かいましょう。買い物が終わったら、お風呂へ向かいます。


 二班:具体的にはまず初めにご飯を炊き、食材を切ったり、調味料を用意したりします。準備が終わったら、お風呂へ向かいます。


 三班:まず初めに、お風呂へ行きます。お風呂でリラックスした後は、料理をお願いします。」


 「それでは班分けですが、新入生以外は以前と同様でお願いします、新入部員さん料理の得意な子いますか?」

 『松林月愛<まつばやし るな>』が

 「『哉太 <かなた>』が料理得意です」

 と答えたので、本人に確認すると、問題なさそうなので、三班に入っていただきました


 結果班分けは以下の通りです。

 一班<買い出し>

  七瀬美空 <ななせ みく>

  朝宮琴葉 <あさみや ことは>

  花園百合 <はなぞの ゆり>

  姫野楓 <ひめの かえで>

  綾瀬遥香 <あやせ はるか>

  松林月愛 <まつばやし るな>


 二班<下準備>

  咲野美桜 <さきの みお>

  恵南優花 <えなみ ゆうか>

  南瀬空結衣 <みなせ あおい>

  胡桃坂智里 <くるみざか ちさと>

  雪野泉 <ゆきの いずみ>

  本田輝夜<ほんだ かぐや>


 三班<料理>

  南彩月 <みなみ さつき>

  朝日奈菊 <あさひな きく>

  花見沢双葉 <はなみざわ ふたば>

  古美山桜 <こみやま さくら>

  早乙女岬 <さおとめ みさき>

  星乃哉太 <ほしの かなた>

 以上の班分けが決まりました


 「食後、部室に集まり、火星観測を始めます。

 先週の週末活動で少しは情報を取得しましたが、合宿中に火星は再接近します。できるだけ、火星の極冠の画像を撮影して、その詳細データを取得することが目標です。

 画像撮影がメインのため、夜間に活動を行います。 データの整理は明日の昼間に行う予定です。それでは、行動を開始してください」


 *****


 私が担当する料理班は、入浴のために銭湯に移動しました。 部活で一括回数券を購入しているので、回数券を使って入浴しようとしたところ、いつものように「女湯は左奥ですよ」とおじさんに指摘されました。

 いつもの光景だったので、私は学生証を見せて説明しました。

 おじさんはいぶかしげそうな表情をしていましたが、一応納得してくれたようです。私は一人でロッカーで制服を脱いで、タオルを持って浴室に入りました。


 *****


 「ねえねぇ部長、『哉太』くんってすごいね。どう見ても女の子にしか見えないんだけど、今頃男湯ではみんな驚いてるかもしれないよ、女の子が入ってきたと思っちゃったんじゃないかな? 『月愛』さんに聞いたら、ウエストが私よりも細くて四十八センチなんだって ~。顔も小さくて足が長くて細いし、声も女の子みたいだから、私、いまだに男の子だと思えないのよね~」

 と、高等部二年の『朝日奈』さんが話しかけてきました。


 「わかってるとは思いますが、本人の前で言うのはダメですよ。我が校は自分らしさを重んじるため、女性でも制服にスラックスを選択できるし、髪型も自由です。性別で差別しないことになっているので、注意が必要よ」


 「でもね、合宿所の寝室どうするの?三部屋しか取れなかったのよ、『哉太』君だけ一室にできないよね・・・」

「その件は、新入部員に確認したところ、『哉太』君と同室で構わないとの同意を得られたので、私と副部長、新入部員三人、顧問の先生の合計六人が一部屋に泊まり、残り十三人はもう二部屋に分かれることに決まりましたよ」

 「へぇ~」


 *****


 僕が髪を洗っている時、視線を感じますが、気にしないことにしています。

 なんかね、そんなに気になってたら私のメンタルも保たないし、私自身はこの見た目が好きだから、可愛い服も着れるし、女友達とも気兼ねなく話せるから、今まで不自由を感じたことなかった。でも、『本田』さんが好きになって、彼女は見た目を気にするかもしれないし、やっぱり見た目だけでも男っぽくないといけないのかなって悩んでるんだ。

 体を洗い終えたので、浴槽に浸かって温まることにしました。


 脱衣場で制服を着こんで待合室で待っていると女性グループも出てきたので、みんなで学校に戻ることにしました。


 家庭科室に戻ると、一班の食材買い出しと二班の下ごしらえが終わっていたので、料理を開始しました。とはいえ、そんなに大変な料理ではなく、野菜サラダ、クリームシチュー、アスパラのベーコン巻き、そしてデザートのフルーツヨーグルトを作りました。

 量が多いから力仕事で、みんなが私に期待してるけど、ごめんなさい力には自信がないの。がっかりさせちゃった……なんか自分の責任みたいに感じちゃうな〜。

 ともかく、みんながお風呂から帰ってくる頃には料理が完成し、食事を楽しみました。 食後、食器を片付けて家庭科室を掃除したので、部室に移動して観測を開始しました。

 *****


 本日は天候もよく、火星の画像はかなりきれいに取れました、極冠の画像も取れたので、本日の活動は予定通り三時で終了して合宿所に移動しました。


 「それでは部屋割りを発表します

 第一宿泊室は

  美咲彩羽先生

  七瀬美空副部長

  本田輝夜さん

  松林月愛さん

  星乃哉太さん

  部長の私、南彩月です


 第二宿泊室

  咲野美桜さん

  朝日奈菊さん

  南瀬空結衣さん

  花見沢双葉さん

  姫野楓さん

  胡桃坂智里さん

  早乙女岬さん

 第三宿泊室

  朝宮琴葉さん

  恵南優花さん

  花園百合さん

  古美山桜さん

  綾瀬遥香さん

  雪野泉さん

 以上です、明日の朝十一時起床で、朝昼まとめて食事をします、皆さん浮かれないでさっさと寝てくださいね」


 みんなで

 「は~い おやすみなさい」と返事をして、各寝室に入っていきました。


 *****


 【フェアリー・ドーン】号の端末アンドロイドから、まもなく太陽系第三惑星の衛星軌道に入るとの報告を受けました。さらに、私に向かって指示を求めてきました。

 私は、【フェアリー・ドーン】号に迷彩システム起動して、衛星軌道を維持するよう指示して精神波を送る準備に入りました。

 迷彩システムは電波および光を素通りさせるので、この星の科学では発見できないだろうと考えています。

 私はエルフィン星男性種の最後の生き残りであり、精神生命体が五百歳を迎え、近く寿命を迎えます。

 妻とともに、新たに開発された【フェアリー・ドーン】号及びマザーコンピュータ【ガルバニック・ブレイン 】の動作検証を外宇宙で行い、無事に終了した後、母星に帰還途中に精神生命体が八体転送されてきました。

 母星の異変に気付き、精神生命体の情報の解析を試みたところ、我々の星に侵略を仕掛けたゴブリン星人によってエルフィン星が滅亡したことが判明しました。急いで母星への帰還を諦め、種の保存をかけて遺伝子結合が可能な生命体を求めて宇宙を四百五十年さまよいました。

 すでに、【フェアリー・ドーン】号及びマザーコンピュータ【ガルバニック・ブレイン 】の共同開発者であり、私の妻が先立ち、私も寿命を迎えつつあります。

 我が娘たちは念のため、長女が十五歳のときに凍結保存しました。子供たちは全て女性種であり、男性種は生まれませんでした。

 私たちの故郷であるエルフィン星では、男性種はなかなか生まれません。二十人に一人の確率でしか生まれないため、一夫多妻制が認められているのですが、私の妻は共同研究者の女性種のみでした。

 この太陽系第三惑星が私たちの最後の望みです。

 二千年前に調査隊を派遣しましたが、誰一人帰還しませんでした。この惑星に何か問題があるかもしれませんが、もう時間がありません。

 私はわずかな望みにすがって、この星に私の精神波を送り、返信を願っています。これが私の最後の賭けです。


 *****


 第一宿泊室では、顧問の美咲先生から。

 「皆さんは理解してると思いますが『星乃』さんは男性なので寝相には気を付けてください」 と注意がありました。

 布団は川の字に二列で敷き、先生と、部長の間に『星乃』くんが寝ることになりました。

 就寝の準備ができたので、部長の『南』先輩が。 「それでは電気消します、おやすみなさい」

 みんな声をそろえて。 「おやすみなさい」と、答えて布団の中に入りました。

 しばらくは話し声がしていましたが、一人二人と寝息が聞こえてきました。

 わたしも早くも寝ないと明日が大変だ、と思えば思うほどなかなか寝付けないんだよね〜。

 もっと『本田』さんと話したかったな~、なかなか話すタイミングがつかめないな~、明日こそ頑張ろう・・・異星人と出会うチャンスはめぐってくるかな~、陽気な異星人だといいな~・・・そんなことを考えているうちに、気がつけば眠っていました。


 *****


 話し声がしたので、話し声のするほうを向いてみると、見たことのない【女の人】かな? もやがかかっていてよく見えないけど、話してみ​​ようと思いました。

 「あなたってどなたですか?天文部員じゃないですよね、他の部活の方ですか?」

 しばらく見ていると、もやが少しずつ晴れてきた。そして、そこには耳が少しとがった、とても美しい女性が立っていてました。

 わたしは驚いて

 「これ夢なの ‼ 」

 エルフ似の【女性】がそれに答えて

 「私の声にこたえてくれてありがとう」

 声も震えながら、とてもうれしそうに話し始めました。

 「今の状況は、私の精神波があなたの脳に送られ、夢の中で私が話しているという状態です。つまり、私の声や姿は、あなたが見ているものはすべて私の精神波です。後、訂正すると私は女性種ではありません・・・

私たちの種族では、男性種と女性種を見わけることはできません。生殖器の形状だけが異なるのです」 僕は驚きながら

 「魔法が使えるの。あなたたちはエルフ族なのですか?地球に侵略とかしないですよね?」

 支離滅裂な、後で考えるととても失礼な質問を立て続けて行いました。

 見た目【エルフ族】の男性・・でいいのかな? とても驚いた様子で答えて

 「なぜあなたは、エルフという名前をご存じなのですか? 私たちには種族という概念はありませんが、あなたたちからすると、私は【エルフィン星人】と呼ばれることになります」

 わたしははびっくりして

 「うわー!異星人なの?!すごーい!夢が叶っちゃった!やったー!」

 わたしは飛び跳ねる勢いで小躍りしてしまいました、【夢】の中だけれど・・・

 「あなたが異星人とつながりを取りたいという願いが、私の精神波を呼び寄せたんです。 それは魔法じゃありません。 私たちは、肉体と精神生命体の融合で構成されているのです。送信することによって、会話をしたり映像を見せたりすることができるのです

 少し落ち着いてきたので改めて質問することにしました。

 「うわー!エルフィン星人さん、地球にようこそ!何かご用があるのでしょうか」

 「詳しい説明は、あなたたちの同意を得た後に行いますが、私たちエルフィン星人は、現在絶滅の危機に直面しており、地球の方々から協力をぜひいただきたいのです」

 絶滅とは穏やかではないですね。何か協力できるかもしれないな。まずは確認してみようと思ったら。

 「あなただけでは私たちの危機を救うことはできません。数人の女性たちに協力してもらわなければなりません。」

 今部活動で女性は十八人いるけれど勝手に返答できないな・・・どうしよう?

 「十八人もいますか!助かります。ぜひ皆さんでご協力していただけますようお願いします」

 考えただけでわかったんだ、すごいな。私たちに隠し事はできないのね。

 「じゃあ、明日みんなに声をかけてみるね。それと、夢に出てくれると嬉しいな。あと、一緒に会話するときはどうしたらいいかな?」

 「異星人に出会いたいという思いを抱いて寝ることで、私の精神波が皆さんに同じ夢を見せることができます」

 「了解ね、また明日会いましょうね」

 そう答えると、エルフィン星人は微笑みながら影が薄れていき、私は誰かに揺り起こされていることに気づき、夢から覚めました。


 *****


 昼食が終わったので、部室に集合して部長からお話がありました。

 「これから先日の画像をもとに、データ整理を行っていただきます。十六時になったらまた、先日同様三班で行動願います、それでは作業開始です」


 *****


 わたしは、部長に歩み寄り

 「部長、少しお時間よろしいでしょうか?」

 と、声をかけると

 「『星乃』くんなあに?」 優しく微笑みながら聞いていただくることになりました。

 わたしは、先日見た夢について話して、今晩みんなで協力してくれないかお願いしてみました。

 部長はとても驚き、わたしをまじまじと見てきました。

 わたしは、『確かに、夢の話だから本当にしてくれるわけないよね』と思いましたが、それでもわたしが真剣に話していることは理解いただけたようで。

 『それでは、部活終了』時に、みんなに話してみましょう』と約束していただけました。 わたしは心の中で、『なんて素敵な部長なんだろう、天文部に入って本当に良かったなあ』とつくづく思いました。


 *****


 部活終了後、部長はみんなを集めて

 「星乃くんから、皆さんに大切なお願いがあります。星乃くんはとても真剣に考えているので、皆さんも笑わないで聞いてあげてくださいね。それでは、星乃くんどうぞ」

 「夢物語のように聞こえるかもしれませんが、先日夢の中に異星人が現れ、滅亡の危機に瀕していると訴えられました。私たちに協力してほしいと頼まれました」

 本田輝夜さんが「質問がございます」と手を挙げられたので。

 私は、「本田さんどうぞ」と声を掛けました。

 「全員で協力する必要があるのでしょうか?」

 私は「できるだけたくさんの協力が必要とのことでした」と、答えました。

 副部長の『七瀬美空』先輩が「質問がございます」と手を挙げられたので。

 私は、「七瀬先輩どうぞ」と声を掛けました。

 「具体的にどうしたらのか分からないわね、そもそも、私たち以外にはできないことなの?」

 私は「具体的な方法は、一度皆さんの夢の中に来ていただいて説明していただきます。星人さんですが地球にコンタクトを試みたそうです、私にだけが答えられたそうです」

 美咲先生が「質問がございます」と手を挙げられたので。

 私は、「美咲先生どうぞ」と声を掛けました

 美咲先生は、「私も協力するのでしょうか?」と

 私は「できればお願いします」と答えました。

 しばらく待ちましたが、質問がないようなので。

 「それでは、異星人とのつながり方を説明します。異星人に会いたいという思いを抱いて眠りにつくことで、異星人さんは皆さんの夢の中に現れてくれます」

 私は「聞いていただいてありがとうございます。それでは部長お願いします」と言いながら深々とお辞儀をしました。

 部長は、「星乃さんにも協力をしたいと思います。いろいろと疑問はあるかもしれませんが、とりあえず今夜だけはお願いを聞いてくれませんか?」

 「それでは、今夜も先日と同様の部屋割りでお休みください。お疲れさまでした」


 *****


 みな思い思いに宿泊室に移動して就寝につきました。

 みんな来てくれるかしら、ここは信じるしかないわね。異星人の方に約束通りみんなに声をかけました。今夜も会えるかしら。ちょっと不安だけど楽しみですね~。いろいろ考えていたら気がつけば眠ってしまいました。

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